最近はPCでゲームができることが広く知られるようになり、性能の高いゲーミングPCを探す人が増えてきているようです。そんな人のなかには、「ゲーミングPCがほしい」という要望をもつ方もいるようです。
このエントリでは、ゲーミング用PCならびにノートPCを取り巻く現状を見つつ、そのメリット・デメリットについて考え、そのなかでも効果的なゲーミングノートPCの買い方を見ていくことにしましょう。
このエントリのポイント
- ゲーミングノートPCに一番強く求める要素を考えておこう。
- 予算は多めに用意しておこう。
ノートPCの現状
まずゲーミングノートPCについてあらかじめ結論を述べておくと、基本的にオススメできるものではありません。その理由は細かく後述しますが、高価になりがちな割にあまり使い勝手がよくないからです。
そうはいっても、ゲーム用のノートPCがほしい人にとって、そう簡単に諦められるようなものではないでしょう。
ゲーム用途のデスクトップ・ノートについては後で考えていくとして、まずはノートPCの現状についてみていきましょう。
デスクトップ・ノート・スマホの違い
現在PCやデバイスとして使われる頻度の高い個人的な端末は、デスクトップPC、ノートPC、スマートフォンの3種類が挙げられます。
これら3種の機械の違いについで、細かく見ていきましょう。
性能のデスクトップ
まずはデスクトップPCについてですが、パソコン、つまりパーソナルコンピュータとして使用される機械では最も基本的な形式を指します。
ご存知のように据え置き型で、使用中に動かすことはほとんどありません。ノートと違って基本的にキーボード・モニター・本体が一体化しておらず、有線・無線の違いはあるにしても別途接続する形式となっています。近年「一体型PC」というタイプの製品が販売されていますが、デスクトップとは別物です。
ノート・スマホと比べると、その性能の高さが顕著です。理由としては市場が充分に大きいことと、拡張性の高さが挙げられます。
市場が大きいために幅広い製品が出回り、拡張性が高いためにその多種多様な製品を自在に使いこなすことができるのです。
この点をノート・スマホで比較すると、デスクトップよりも拡張性の低い点が強く目立ちます。特にスマホは修理などで、バッテリーなどを同じ正常な製品と交換することはできますが、古いスマホに新しいスマホのパーツを移植することはできません。
ノートにおいては、メモリやHDDなら比較的容易に交換することができますが、ケースの開けにくさなどがあり、マザーボードやグラフィックボードは換装しにくくなっています(製品によって異なります)。
またノート・スマホは既製品の市場自体は大きいのですが、「内部のパーツ」に関する市場は決して大きくありません。デスクトップでは自作PCとして海外でも趣味としている人が多いので、内部のパーツですら十分な市場の大きさを形成しているのです。
こうした理由から、デスクトップは性能・拡張性を両立できるデジタルデバイスだといえます。
携帯性のスマホ
次はスマホです。スマホの特徴はやはり携帯性にあるといえます。ポケットに入れたり手に握ったまま持ち運んだりしても重さが気にならず、ネットブラウジング・動画視聴をできるデバイスは他にありません。デスクトップは持ち運びすること自体が荒唐無稽ですし、ノートですらキーボード部分が邪魔です。
現在では若い人の多くがスマホを所有し、電車のなかでも誰もがスマホを触っているという様相を呈しています。若い人のなかにはPCを所有せずにスマホで充分だと認識している人も多いようで、広く普及しているデバイスであることは間違いありません。
性能においてはデスクトップ・ノートという「PC」にはやはり及びません。現在ではスマホも充分に性能が上がり、アプリなどでスーパーファミコンのゲームなどが遊べるようになっています。また3Dのゲームなどもスマホで遊べる時代です。
しかしそうしたゲームはスマホで遊べるから驚かれるのです。デスクトップやノートで起動できても凄いことはなにもありません。マルチプラットフォームに対応しているスマホのゲームをデスクトップで動作させてみると、やはりデスクトップ用の高画質のゲームとは比べるべくもありません。
スマホの特性は、PC用ゲームとは画質など比べるべくもないとしても、携帯していつでもどこへでも持ち運びできることで、好きなときにゲームやアプリを使用できる点にあるでしょう。この点が、いわゆるソーシャルゲームなどのスマホゲームの隆盛の起因になっているともいえます。
中間のノート
それでは今回の話題の中心であるノートについてです。
デスクトップ・ノート・スマホを比較したとき、ノートはデスクトップとスマホの中間に位置するようなデバイスだといえます。
性能はスマホより高く、携帯性はデスクトップよりも高いのです。
もちろんその分、性能はデスクトップに及ばず、携帯性はスマホに及びません。
デジタルデバイスの歴史から見ても、デスクトップの携帯性を上げることでノートが登場し、さらに小型にすることでスマホのような小型デバイスが誕生するに至りました。そうした面からも、デスクトップとスマホの間に挟まれているのがわかります。
基本的な用途は仕事用
ノートPCの用途は、オフィスでも自宅でも使用できることから基本的にビジネスのために用いられています。テザリングやWi-Fi、クラウドサービスなどをインターネットで利用することで、その利便性も格段に上がっています。
もちろんデスクトップと同様、OSにWindowsを搭載することができ、「パソコン」という使用感を実感しながら利用することができます。この点はスマホと異なります。
スマホはアプリケーション単位で起動するか否かを管理するのみで、「パソコン」のようにフォルダ管理を行いません。
そうした点でノートはデスクトップと同様にゲームを遊ぶこともできますし、スマホで利用できないソフトを使用することができるデバイスでしょう。
ノートPCのメリット
前述の通り、デジタルデバイス全体を見るとそれぞれの機械は「性能」「拡張性」「携帯性」などで区別することができます。その点で比較すると、全体的にノートの特性はどれも「中間的」です。
こうした全体的な観点から、ノートのメリットを見てみましょう。
PCを持ち運べる
やはりノートの特性としては、PCとして持ち運びできるのが大きなメリットといえます。これは「携帯性」において、デスクトップより優れているということです。またスマホと比較すると、スマホは使用感がPCと異なり、仕事などで書類・ファイルを作成する際には、やはりPCのほうが使いやすいという方が多いでしょう。
デスクトップはノートより性能は高くしやすいのですが、やはりコンシューマゲームの据え置き型ハードのように動かすことができないのが難点です。そうして比べてみると、ノートはサイズや画面を小さくして持ち運びできるようにしたゲームの据え置きハードに似ているといえます(PSPやニンテンドーDSのような携帯ゲーム機はスマホ寄りでしょう)。
スマホより性能が高い
次に「性能」という特性においては、ノートはスマホより高性能であるといえます。細かくはノートとスマホではOSが違うので使用感が異なるので、性能に差があるのは当然ながら、やや別物であるという感覚が強いのは否定できません。
しかしノートでは費用を出せばデスクトップ並みに3Dゲームをプレイすることができますが、スマホではできません。「スマホゲーム」という区分が、PCとスマホではゲームの仕様が異なることを如実に表しています。
スマホより仕事で使いやすい
仕事やレポート作成用に文章を作成などする場合、やはりスマホのフリック入力とPCのキーボード入力では使用感がまったく異なります。フリック入力のほうが使いやすいという人がいますし、実質的な入力速度は個々人によって変わるでしょう。
しかし仕事でデジタルデバイスを使用する際は、スマホとノートを併用することがあるとしても、スマホだけでノートは使用しないというのはやや不便です。
WordやExcelのファイルを交換・閲覧するときに、上司や取引先がPCで使用していれば、基本的には互換性を重視して同様にPCで扱うようにすることが推奨されます。スマホでも利用できることはあるのですが、仕事では「自分の好み」や「自分の都合」でツールを選ぶのではなく、やはり相手の状況に合わせて選ぶのが基本です。
そうした観点では、まだスマホは仕事のファイルを作成する機械として認知されているとは言いづらいでしょう。
ノートPCのデメリット
デジタルデバイス全体を通してノートのメリットを見てきました。メリットがあれば、デメリットがあって当然です。ノートにはどんなデメリットがあるのでしょうか。
デスクトップに安さ・性能・拡張性で劣る
ノートとデスクトップを比較したとき、ノートのデメリットの大きさが目立ってきます。
ノートとデスクトップは両者とも「パソコン」として使用感が共通していますが、ノートの「携帯性」というメリットのために、安さ・性能・拡張性という3点で大きくデスクトップに離されてしまっています。
ノートは割高
まずノートはデスクトップと比べると、「価格」の点であまり優秀ではない、つまり高価になりがちだといえます。特に顕著なのは、ノートと自作デスクトップを比較したときでしょう。ただでさえPCは高価なので、価格が高めだというのはデメリットとして大きいでしょう。
もちろんノート製品でも費用を抑えるべく努力がなされているものもあります。しかしノート製品でそうした努力がなされているということは、もちろんデスクトップ製品でも同様な努力がなされているということでもあります。
基本的にノートは割高になりやすいことを把握しておきましょう。
ノート用パーツは高性能とは言いにくい
ノートとデスクトップを比較したときの次のデメリットは、「性能」の点においてノートのパーツの高性能とは言いにくい点にあります。
その原因は前述の「割高」と共通しています。性能が同程度で割高であれば、それは「同じ値段であれば性能が低い」という意味になります。性能と価格のどちらを軸とするかで評価が変わります。
ノートは拡張性が低い
ノートとデスクトップを比較したときの3つめのデメリットは、「拡張性」の低さです。
PCはそもそも用途が決まったパーツの集まりで、それぞれの接続を外してパーツの交換などができます。ノートでも一部可能ですが、基本的に自作PCはデスクトップを対象としており、あくまでノートは一部に過ぎません。
デスクトップのPCケースはなかのパーツを見たり外したりするために開けられるようになっていますが、ノートのケースはメモリやHDDなど一部のみを交換できるようにケースに制限が加えられています。ノート製品によってはメモリやHDDすら交換できるように設計されておらず、完全に分解しないと交換できなくなっている仕様の製品もあります。
たとえばグラフィックボードというパーツを通して見てみると、そもそもノート用のグラフィックボードが販売されておらず、「グラフィックボード搭載ノート」としての既製品か、外部接続できる端末を利用してデスクトップ用グラフィックボードを外付けするかという情報が散見されるのみです。
このデスクトップ用グラフィックボードをノートに外付けするという方法も、あまり賢明ではありません。まずグラフィックボードと別に、その外部接続用の端末を購入しなくてはいけません。間違いなく出費が増えます。
次にノートの「携帯性」が崩れます。小型のグラフィックボードはのきなみ性能が低く、性能がいいものは大型になりがちです。
さらに故障するおそれがあります。グラフィックボードは精密機械です。持ち運びするとしても、乱暴に扱うえば故障の危険性は一層高まります。
そしてグラフィックボードを既定の方法で使用しないため、本来の性能を発揮できません。
ノートの不思議な拡張の方法だと楽しむことはできますが、わざわざノートでする実用性がそこまであるものでもないでしょう。
なおノート用グラフィックボードなどがネットオークションで販売されていることがありますが、補償の点からあまり推奨されません。もちろんトラブルへの対処ができる人は別です。しかしいずれにせよ、デスクトップ用のグラフィックボードであればノート用のものよりずっと手軽に購入できるのは、各店舗・ネットショップなどを見れば明らかです。
検証例:ノート既製品と自作デスクトップの比較
例として、ノートの既製品と自作でストップを比較してみましょう。価格.comでノートの既製品を1つ選び、それと同程度の性能のデスクトップ用パーツを使用して自作すると仮定して、両者を比較してみましょう。
高スペックのノート製品で探してヒットしたものには、以下の表のようなスペックの製品がありました(比較データはすべて執筆時の2018年10月26日ものです)。このノート製品を否定するつもりはないので、名称や品番は伏せてあります。
スペック | |
価格 | 約¥253,000(253k円) |
CPU | Core i7 8650U 1.9GHz |
グラフィックボード | GeForce GTX 1060 |
メモリ | 16GB |
ストレージ | SSD 256GB |
OS | Windows 10 Pro 64 bit |
この製品のスペックを目指すべく、同程度のデスクトップ用パーツを探していきましょう。
なお今回は、価格と3つのパーツ(CPU・グラフィックボード・メモリ)を中心に比較します。これら3つのパーツは、ゲーム用途を含めたPCの性能の中心となるパーツです。マザーボード・電源ユニット・PCケースなどに関しては比較をしません。
CPUを選ぶ
まずはCPUです。該当ノート製品のCPUは、「Core i7 8650U 1.9GHz」です。このCPUはモバイル用の製品です<参考:ark.intel>。
PassMarkのサイトによると、i7-8650Uのベンチマークのスコアは「8,884」です。これと同程度のデスクトップ用CPUには、スコアが「9,130」の「Core i5-7600K 3.8GHz」を選びました。選んだデスクトップCPUのほうが少し高スコアなのは、今回は「同程度の性能だと自作デスクトップのほうが安くなる」という検証なので、少しくらいデスクトップが不利でも構わないと判断したためです。<両CPUの比較>。
このデスクトップCPU「i5-7600K」は価格.comによると「¥27,440(27k円)」でした。
CPU名 | 価格 | ベンチマークスコア |
i7-8650U(ノートのCPU) | N/A | 8,882 |
i5-7600K | ¥27,440(27k円) | 9,130 |
グラボを選ぶ
次いでグラフィックボードです。該当ノート製品のグラフィックボードは「GTX 1060」と記載されています。実際にはノート用とデスクトップ用のグラフィックボードは同名でも性能が異なりますが、ここでは不問として同名のデスクトップ用GTX 1060と比較します。
価格.comでGTX 1060製品の価格比較によると、デスクトップ用GTX 1060の最安値はGIGABYTE製のGV-N1060WF2OC-3GDで「¥25,808(26k円)」でした。
GTX 1060(デスクトップ) | ¥25,808(26k円) |
メモリを選ぶ
次にメモリです。価格.comでメモリを「1GBあたりの価格」で比較し、該当ノート製品の16GBに相当するメモリ製品を探すと、G.Skillの8GB×2枚組の「F3-1600C11D-16GISL」が「¥10,900(11k円)」でヒットしました。
F3-1600C11D-16GISL | ¥10,900(11k円) |
ストレージとOSを選ぶ
最後にストレージとOSを比較します。
該当ノート製品ではSSDが256GBで搭載されています。価格.comで同量の製品を最安値で探してみると、SUNEASTの「SE800-n256GB」が「¥5,680(6k円)」で最安値でした。
OSは「Windows 10 Pro 64 bit」ということですので、同じく価格.comで検索したところDSP版のWindows 10が「¥17,980(18k円)」で見つかりました。
SE800-n256GB | ¥5,680(6k円) |
Windows 10 Pro 64bit DSP版 | ¥17,980(18k円) |
全体の比較
さて、ここまで該当ノート製品と各パーツを比較してきました。デスクトップ側の総額は「27k+26k+11k+6k+18k=88k」、細かく計算すると「27,440+25,808+10,900+5,680+17,980=87,808」となり、約9万円となりました。
デスクトップとして動作させるには、あとマザーボード・電源ユニット・I/Oデバイス(モニター・マウス・キーボードなど)が必要です。これらのパーツを、これまで比較したパーツの総額を該当ノート製品の価格から引いた「253,193-87,808=165,385(165k円)」という額で用意できれば、今回考えた自作デスクトップのほうが安いということになります。
価格 | |
i5-7600K | ¥27,440(27k円) |
GTX 1060(デスクトップ) | ¥25,808(26k円) |
F3-1600C11D-16GISL | ¥10,900(11k円) |
SE800-n256GB | ¥5,680(6k円) |
Windows 10 Pro 64bit DSP版 | ¥17,980(18k円) |
合計 | ¥87,808(88k円) |
比較対象ノートPC | 約¥253,000(253k円) |
今回のこの比較は、ノートとデスクトップを比較した際のデスクトップの優位性を「価格」と「拡張性」の点で検証したものです。
理論的にデスクトップ用パーツを最安値で買えた場合を仮定したもので、現実的には別のショップで購入したり送料がかかったりして、この理想額よりもいくらか高くなるでしょう。
そしてマザーボードは互換性の確認がやや難儀なため、また電源ユニットは電力量の把握が難儀なために、比較から除外しました。実際に自作する場合は両者ともしっかりと考えなければならず、マザーボードなどは互換性の問題から適切な製品を入手できない場合があります。
しかし適切なマザーボード・電源ユニット・I/Oデバイスを一般的に確保しようとすれば、マザーボードと電源ユニットで合計しても2万円もかからないと想定されます。I/Oデバイスではモニターがやや高価になる程度で、こだわらなければやはり2万円程度で用意できるでしょう。
もしこの「マザーボード・電源ユニット・I/Oデバイス」を4万円程度で用意できた場合は、自作デスクトップのこれまでの額に4万円(40k)を足しておおよその総額が「88k+40k=128k(¥128,000)」になります。
このように比較してみると、概算ではありますが、ノートと自作デスクトップの差額が2倍の差となりました。あくまで頭のなかで構成をしてみただけなので、現実的には費用がかさむ問題が発生する可能性は充分にあります。しかし自作でデスクトップを作ろうとすれば、およそ「半額」で同程度の性能のPCが容易できるという検証結果となりました。
この比較対象であるノートを買うかどうかは、やはり「手間を金銭で補う」という意味で肯定できるかどうかにあるでしょう。筆者は自作PCの経験者で各パーツを自力で組み立てられるので、手間を金銭と交換するというのには忌避感があります。しかし単に手間だけでなく、自作の知識・経験を加味しての「手間」なので、この手間に忌避感をおぼえる人がいてもまったくおかしくありません。
スマホに携帯性で劣る
ノートをデスクトップと比較して見てきましたので、次にスマホと比較した場合について考えてみましょう。
ノートはデスクトップと比べると遥かに携帯性が高いのですが、スマホと比べるとどうしても霞んでしまいます。スマホがポケットに入れたり片手で操作したりできるデバイスであるのを考えると、その利便性はやはりスマホに大きく軍配が上がるでしょう。
この観点からすると、ノートが「パソコン」というアイデンティティをデスクトップから引き継いでいるために、その利便性が犠牲にされていると考えられます。逆に見ると、それまで個人使用できる機械が「パソコン」しかないという限界をスマホが破ったからこそ、スマホは爆発的に広まったとも考えられます。
ノートは「中途半端」
全体的にノートという製品をこうして見てみると、メリットもデメリットもどちらもあります。しかし比較することで、デスクトップとスマホがそれぞれもつメリットを、ノートはほどほどにもっていると見ることができます。裏返せばそれぞれのデメリットをも、ノートはほどほどにもっているということです。よくいえば「中間的な特性」があるということなのですが、端的にいってしまえば「中途半端」でしかありません。
ノートはデスクトップより携帯性で優れていますが、スマホには及びません。ノートは持ち運びができますが、スマホほど手軽に持ち運びできませんし、通知が来たらサッと見て数秒でスリープさせるというスマホの使い方を、ノートに求めるのは厳しいでしょう。
そしてノートはスマホと比べると高性能であるといえますが、デスクトップほどではありません。ゲームをプレイしたり負荷の高いソフトを動かしたりできるPCを選ぶ際、ノートとデスクトップ(特に自作デスクトップ)の作成費用を比べると、検証のようにデスクトップのほうがずっと安くなります。
そして拡張性の面でも、デスクトップに敵いません。グラフィックボードの交換という点などでデスクトップほど手軽に自作をできないということも確認してきました。
このように携帯性、拡張性、性能、そして性能の裏返しとしての価格、という4点でノートがデスクトップ・スマホと比べて「中途半端」であると見なすことができるのです。
これがPCとしてのノートの現状です。
ゲーミングPCの意義とは?
ここまでノートのPCとしての特性を見てきましたので、次はゲーミングPCについて考えていきましょう。
以前はゲーミングPCという名称はなかったと思うのですが、いつごろからか使われるようになってきました(eSportsという名称同様、ビジネスで定着させるために固有名詞化されたのでしょうか)。「ゲームPC」はなく、なぜ「ゲーミングPC」と呼称されるのか具体的な理由はわかりません。
作成者がゲーム用途を目指した機械
名称についてはともあれ、ゲーミングPCとは「ゲーム用途に特化したPC」のことを指します。ゲーミングPCのパーツ構成を考えた人は、ゲーム用途に特化させるために組んだわけです。この点においてスマホはPCではありませんし、ゲーム用途に特化したモデルのスマホを見かけないので、デスクトップ・ノートを主体として見ていくことにしましょう。
ゲーム用途の中心はグラフィックボード
ゲーミングPCの製品を見てみると、しっかりとした性能のあるグラフィックボードが搭載される傾向にあるのがわかります。
価格.comで通常のデスクトップとゲーミングデスクトップを見比べてみると、通常のほうは「Intel HD Graphics」のようにCPU内蔵のグラフィック機能が多く、ゲーミングのほうにはおよそHD Graphicsが見受けられないのがわかります。下の画像はゲーミングデスクトップのページでグラフィックボードの分類の項目を抜き出したスクリーンショットで、HD Graphicsなどの「Intel」の項目が見受けられません。
またドスパラのサイトでも、
特にゲーミングPCに重要とされるのは、「グラフィックボード」、「CPU」、「メモリ」です。
ならびに
ゲーミングPCの要!「グラフィックボード」
(同上より引用)
という文言が見られます。
CPUはPCの脳のような中心パーツであり、メモリは作業をしやすいようにサポートするパーツです。そしてグラフィックボードは、映像の処理を担当するパーツです。ゲームのパフォーマンスを向上させるのにうってつけなのがグラフィックボードです。
ノートはゲーム用途に不適
ゲーム用途でPCについて考えてみるとき、デスクトップとノートでは格段にデスクトップを利用するほうが、勝手がいいといえます。
基本的な理由は、これまで見てきたノートのデメリットと同様ですが、実質的にはどういった点が原因といえるのでしょうか。見ていきましょう。
ノートのグラボはイマイチ
グラフィックボードがゲーム用途で大事な役割を果たすことは確認しました。しかし前述のようにノートは拡張性が低く、後でグラフィックボードを接続するのが困難です。既製品として良質なグラフィックボードを搭載したノートは、同程度の性能を有するデスクトップより高価になりがちです。同程度のグラフィックボードが、ノートではより高価で使用されているようなものです。つまり同額で見ると、ノートでは性能が低くなりがちだということです。
グラフィックボードをコストパフォーマンスの観点で「いいものを安く」と考えるなら、デスクトップで安く同程度のグラフィックボードを使用するほうが賢明です。
デスクトップなら自由にグラフィックボードを換装できる
そしてデスクトップであれば同程度のものを安く調達できるだけでなく、後で自作としてグラフィックボードを交換するのも簡単です。
換装などの拡張性については、デスクトップ用のグラフィックボードをノートに外付けする方法を前述しました。その意義の低さも述べました。わざわざノートの携帯性という特徴を犠牲にして、苦労してデスクトップ用のグラフィックボードを外付けしても、通常デスクトップでそのグラフィックボードを利用するよりパフォーマンスの向上の割合が低いのです。
そのくせゲーミングノートは高い
グラフィックボードをノートに外付けする場合は、専用の接続端末を購入しなくてはいけません。費用がさらにかさむことになります。
それだけではなく、既製品として購入する場合でもデスクトップを自作するときよりずっと高額になることも検証しました。
携帯ゲーム機に及ばない
ゲーム用途に特化させるという点では、根本的に携帯ゲーム機のほうが最適化されているといえるでしょう。
もちろん携帯ゲーム機は特性のソフトをプレイするためのハードとして販売されるものであり、ノートのようにPC用のソフトを利用することはできません。その「汎用性」という点では携帯ゲーム機はノート敵うべくもありません。
「ゲーミングノートがほしい」と言っていたその人がさらに述べていたのは、その具体的な目的は「PSPでモンハンをしたように、友達と集まってPUBGをしたい」であるというようなことでした。
かなり強い気持ちがあるようでした。できるならばその要望を叶えることができればいいとは思います。
しかしその要望は、デスクトップ・ノートを取り巻く現状に即していないと感じられます。
PSPは携帯ゲーム機であり、ノートはPCです。PSPのモンハンは携帯ゲーム機で動作するよう設計されており、ノートでプレイするPUBGはPCで動作するように設計されています。
ノートという中途半端なデバイスで、高負荷なPUBGをプレイする――それも携帯性を保持したまま、という場合、解決策としてはもはや「高額なゲーミングノートを買う」くらいしかありません。それもおそらく15万円以上するようなゲーミングノートが必要とされるでしょう。
ゲーミングPCとはなんなのか?
これまでゲーミングPCについていろいろと考えながら見てきましたが、いったいゲーミングPCとはなんなのでしょうか? この本質について考えることを放棄しては、より深く見ていくことは難しいでしょう。
条件の取捨選択
人生は選択の連続といわれます。状況がどんなに芳しくなくとも、その目的をどうしても達成したい、達成しなくてはいけないということがあります。そういうときには妥協せざるをえません。
今回取り上げた要望を細分化してみましょう。
おおまかな要望は「ゲーミングノートPCがほしい」ということでした。これは「PCがほしい」「ノートがほしい」「ゲーム用途に特化したものがほしい」と細分化できます。
別の人は「5万円以内でいいのない?」と聞いてきます。上記の要望に予算として「〇〇万円以内で」を加えるとさらに制限されます。
「PCがほしい」というのはなんら問題ありません。「ノートがほしい」というのはデスクトップと比較して携帯性を重視してスマホと比べて性能を重視していると見なせます。「ゲーム用途」「○○万円以内」という条件は、「性能」についての要望といえます(価格も裏返せば性能を求めています)。これは「性能に特化されていないはずの中途半端なノートで、性能重視のゲーム用途のものを、性能と相反する基準である価格でさらに有利を狙う考え」というひどく矛盾した条件です。
人の欲求とはもともと内から湧き出るもので、外部の状況を考慮しないものです。ですから矛盾していること自体は大きな問題ではありません。問題があるとすれば、こうした初期的な欲求に固執して、条件を変えようとしない場合でしょう。柔軟に条件を取捨選択できないなら、結局すべてを諦めないといけなくなる可能性があります。
今回でいえば、すべての条件を捨てて最初の欲求に固執した挙句、PC自体の購入を諦めることになるかもしれないということです。
基本的にどんな製品を買うにしても、「○○円以内」という予算の問題はつきものです。この点に関して「まあほとんどの問題はお金出せば解決できるんだから出しましょうよ」と言うのは、さすがに不躾でしょう。
さらに根本的な「ゲーム用途」という目的に、「ゲームなんて子供がやるもんだから無意味だよ」というのも、本人の意志を無視した言動です(筆者はゲームが好きなのでそんなこと言うつもりはありませんが)。
そうなるとまだ現実的なのは、『「ノート」という条件を破棄してはどうでしょうか』という提案ではないでしょうか?
このノートという条件を「デスクトップ」に緩和することで、「○○万円以内」という予算の条件を(完全に実現できるわけではないにしても)緩和して、「ゲーム用途」を達成できる可能性がぐんと上がるのです。
「ゲーミングPC」なんて存在しない
やや極論をいえば、ゲーミングPCなんてものは存在しません。デスクトップであろうがノートであろうが「ゲーミング」という代物、ゲーム用途のPCなどは存在しません。
なぜならゲーミングPCとは「用途によって性能を調整されたPC」という意味に他ならないからです。
我々は「シチュー」をシチューとして認識していますが、ルウ・鶏肉・ジャガイモ・ニンジン・タマネギ・牛乳などを総合的に調理したものです。ルウはさらに、小麦粉・佐藤・塩・生クリーム……というふうに原材料を細かく分類することができます。
ルウがないのに「クリームシチュー食べたい」と言うときには、少なくとも「あまり手軽には用意できない」という状況がすぐに導き出されます(なぜならルウとは手軽に料理を作るために販売されているからです)。
そしてそれら素材に対して「シチュー用鶏肉」「シチュー用ジャガイモ」「シチュー用ニンジン」と呼ぶのは荒唐無稽です。シチュー用ルウですら人間が勝手に調合してそう呼んでいるだけです。
「そうはいってもステーキ用牛肉とかあるじゃないか」とおっしゃるかもしれません。たしかにそうした製品が存在します。しかし牛はステーキ用とされるために生まれたわけではありません。人間が牛をステーキなど食用にするために育てているだけなのです。
それと同様に、ゲーミングPCなんてものは存在しません。存在するのは「〇〇と△△と□□というパーツを組み合わせた『PC』と呼ばれる代物」です。そのパーツの組み合わせによって、使用者が「高性能だ」と感じるものが「高性能なPC」であり、「低性能だ」と感じたら「低性能なPC」と判断されます。人間の主観に過ぎません。
ゲーミングPCという代物を分解するとパーツがただ残ります。「ゲームがどうのこうの」という人間の主観による定義は、パーツひとつひとつに宿るものではなく、我々人間の側がそうしたパーツをどう認識しているのか、という総合的な情報に過ぎません。
こうした考えが言語化できているかは別として、おそらく自作をする人は多くがこの点について理解していると思われます。
難しいのは自作をしない人に、これを伝える場合です。
日常生活で知り合いと話をするときなどに「ゲーミングPCがほしい」と言ったりするのはなんら悪いことではありません。話題として共通言語のようにわかりやすい表現を用いるのは、コミュニケーションの基本だからです。
しかし実際にPCを選ぶ段階では、「ゲーミングPCがほしい」という表現をとるのは、いささか無邪気だといえるでしょう。
ハードになにを求め、ソフトになにを求めるか
「安いゲーミングノートがほしい」という要望は、考えれば考えるほど難しい問題です。
いわば「立ち食いや立ち飲みの手軽さでフルコースを食べたい」と言っているようなものです。筆者はそれに対して、「そんなの実現不可能だ」と反論したいわけではありません。「現状そんな店舗はない」という他ないのです。なぜなら実際にそんな店舗が見当たらないからです。筆者は「そういう要望をもつ人がいて充分に需要が大きいなら、それを察知してそういうお店を作る人もいるかもしれませんね」とは言えますが、そうした店舗を作るか否かはつまるところビジネスとして成立するか否かでしょう。
そして我々はいろんな店舗を知っているだけであって、「よしじゃあそういう店舗を作ろう!」と奮起する起業者ではないので、その要望に対して「そうなるといいね」以上の提案ができません。
PSPが携帯ゲーム機でPCが汎用的なデバイスである、というハードとしての違いはたしかにあります。しかし要因はそれだけではなく、ソフトとして「PUBGはPSPのモンハンのようなゲームか」または「そのようなゲームになるのかどうか」という問題もあります。この点については「運営会社に要望を提出してください」「可能性があれば採用されるかもしれません」以上の慰めを、筆者も他の誰もかけられないのです。
現在PUBGはスマホでも配信されています。スマホならば携帯性の高いデバイスなので、PSPのように持ち合うことは手軽でしょう。しかし当人はスマホ版では納得できないようでした。
これもソフトとして、運営会社に要望を出して改善を図ってもらう他にありません。その判断は我々がすることではなく、運営会社がビジネスとして判断することであるはずだからです。
この要望に関しては、筆者自身も打つ手をあまり考えられず、やや無力に感じています。当人は、携帯ゲーム機やスマホのように「寝転んだり場所を変えたりしてプレイしたい。デスクトップみたいに姿勢を固定するのがだるい」というような要望も語っていました。
この要望は、PCの汎用性やノートの携帯性に当人が過度の期待を感じてしまったことが理由かもしれません。
しかし筆者が今感じるのは、「電話で話すのが楽しいから、どこでも持ち運びできるようにしてほしい」というような携帯電話が普及するずっと前の需要にも似ている、ということです。
結果的には現在、電話はいつどこでも会話できるように携帯して持ち歩けるようになりました。それは技術の進歩のためです。
同様にこれからさらに技術が発達すれば、ノートで使用できるソフトやゲームをスマホなどの常時携帯型デバイスで使用できるようになる日が来るかもしれません。その先には、デスクトップで使用できるソフトやゲームをスマホくらいのデバイスで使用できる日がくるかもしれません。
ですがそのような夢物語を話すにしても、結局は仮定の話にすぎません。少なくとも筆者はその要望に対する対応策を「高価なノートを購入する」以外には見出せませんでした。
この要望を出してくれた人は具体例として実際に話してくれた一人に過ぎず、こうした要望が一般的であるとは断言できませんが、その不満をなんとか解決できる、もしくは技術が発達して不満が解消される日が早く来ることを願うばかりです。
それでもゲーミングノートがほしい!
これまでやや否定的にゲーミングノートについて見てきました。しかし現状がどうであるとかとは別に、最適解ではないにしてもなんとか解決策がほしい、ゲーミングノートがほしい、と考える人はいるでしょう。
万人が納得するものではないにせよ、筆者も解決策は提示してきました。それは他ならぬ「費用」です。
予算を潤沢に用意する
ノートは自作デスクトップに比べると高価になりがちだということでしたが、その価格に納得できるというのであれば、あまり悩むことはありません。
当サイトではグラフィックボードなどの高価な製品を「性能重視」のためにオススメしてきています。その理由も「ほしいと切望する機能(や性能)があるなら、その熱意の前には金額という壁は大したものではない」という考えがあります。
これまでこの案を推してこなかったのは、やはり自作デスクトップであればそれほど費用がかからないという具体的な対案がとても有効だったからでした。この項目ではデスクトップのことは完全に除外しましょう。
予算はとにかく多めに
この案に際しては、とにかく予算を多く見積もってもらうことが大前提です。予算をケチるようであれば、大したことのない性能のノートになってしまいます。これまで渋っていたのは、この予算の大きさと性能の大きさがオススメできるほど良心的ではない点にありました。
基本予算は10万円以上
具体的には、10万円以上の予算があると良いでしょう。これ以下のノートですと、「快適にゲームをプレイする」どころか「まともにゲームが動作しない」という低い性能の製品を選んでしまいかねません。
細かくは、やはり高性能なグラフィックボードがある製品のほうが良いでしょう。Intel HD Graphicsは避けて「GTX 1050」以上を搭載しているノートを選びましょう。できればメモリは16GB積んでいるほうがいいのですが、CPUの性能やストレージがSSDであるかなど総合的に判断できるとなお良いでしょう。
実質的にゲームをプレイする際は、あまり画質にこだわるのは難しいかもしれません。ゲームをスムーズに動作させるにはメモリを多く搭載すればいくらか実現できるのですが、画質など映像に関する処理はグラフィックボードが担うからです。
バランスを考えると、グラフィックボードばかりを高性能にするわけにもいきません。
できれば15万円以上
不満をより減らしてより高画質でプレイしたいのであれば、15万円以上の予算がほしいところです。グラフィックボードはGTX 1060などがこの価格帯に該当します。グラフィックボードの性能を上げると、高画質が見込めます。
また「10万円以上」では難しいところでしたが、メモリは16GB、ストレージにはSSDを搭載していると充分な性能を確保できるでしょう。メモリ・SSDを補強することで動作がスムーズになります。
実際にはGTX 1070などのグラフィックボードがあればいいのですが、そうなると20万円前後の予算が必要になってしまいます。より高性能なGTX 1080であれば、25~数十万円が相場となっているようです。
数年で買い替える心積もりで
ノートは拡張性が高くないということは繰り返し述べてきました。拡張性が高いデスクトップであれば、一部のパーツが壊れても該当パーツを交換すれば修理できます。しかしノートでは一般的に拡張できるのはストレージ・メモリくらいのものです。
つまり主要パーツが壊れた場合は、自力での修理がかなり難しいということです。基本的には買い替えるのが選択肢になるでしょう。
「そのPCがどれだけ高価か」というのは、こうした状況に関係がありません。ノートであればパーツの交換がしにくいので買い替えることになるのです。実質的には「寿命」といえるのかもしれません。
盗まれないように
他に気をつけておいたほうがいいことといえば、携帯性が高い割にスマホより性能があり、また購入すれば高価なノートなので、盗まれるおそれがあることは自覚しておきましょう。
まとめ
- ゲーム用途でノートを選ぶなら、デスクトップやスマホと比べて中間的であることは理解しておこう。
- なぜ「ゲーミングノート」を求めるのかをしっかり考え、絶対に妥協できない点を自分で探っておこう。
- 不都合を覆い隠すのは結局「資金」である。
さいごに
筆者はデスクトップを主に使用しています。ノートも所持していますし、ノートをメインに使用していた時期もあります。
近年頻出するようになってきた「ゲーミングPC」という名称と、その用途をノートに適用するという考え方には、「パソコン」という代物の現状を踏まえると、筆者もうんうんと唸らざるをえません。
今回の記事内で取り上げた要望と似た考えをもつ人は少なくないでしょう。そうした人にとっては、現状がどうのこうのというのはどうでもいいことであるかもしれません。こうした要望の難しさに気にかけることも少ないかもしれません。
今回の記事の論調を見ていただければわかるように、筆者はゲーミングノートPCに好意的ではありません。しかしお互い主張をしているばかりでは建設的ではない、歩み寄ってなにか提示すべきだ、と感じ、完璧には程遠いながらも妥協策を述べさせていただきました。
できるなら今回の記事が、こうした要望を抱く人になんらかの解決策を提示できれば、喜ばしい限りだと考えています。