アンチエイリアシングって? 自分を騙そう!

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ゲームをプレイしていると、設定のなかに「SSAA」や「MSAA」という項目が存在することがあります。これはアンチエイリアシングというものなのですが、この設定はいったいなんなのでしょうか? また他にどんな種類のアンチエイリアシングがあるのでしょうか?

このエントリのポイント

  • アンチエイリアシングは映像をキレイ見えるよう「騙す」技術。
  • 「ジャギー」が気になるなら使ってみよう。
  • 使わなくても別に死にはしない

アンチエイリアシングとは?

アンチエイリアシングとは、映像・画像の処理技術のひとつです。ゲームをプレイする上では、設定として用意されており、いくつかの種類があるので、どれを選べばいいのか悩むこともあるかもしれません。

閲覧者の目を騙す手法

アンチエイリアシングは、端的には「閲覧者の目を騙す手法」といえます。なにも設定しない状態だと、映像はある要因から乱れることがあります。その乱れを軽減する技術が、アンチエイリアシングです。

アンチエイリアシングという言葉に馴染みがない人が多くいるかもしれませんので、まずはこの「アンチエイリアシング」という名称の由来から見てみましょう。

「アンチ」とは?

アンチとは「anti-」という英語の接頭辞(言葉の頭につくお決まりの文字)です。Oxford Dictionaryのオンライン英英辞書によると、「anti-」は「Opposed to; against(~に反対して、対して)」「Preventing(阻害して)」「The opposite of(逆の)」というような意味があります。
アンチエイジングは「抗老化」を意味するので、この場合のアンチは「~に反対して」であり、アンチクライマックスは「肩透かしの終わり方」なので、クライマックスとは「逆」であるという意味のアンチとわかります。

「エイリアシング」とは?

エイリアシングは「aliasing」という英単語であり、端的には「歪み」を意味します。Oxford Dictionaryによると、「aliasing」はコンピュータ用語として「The distortion of a reproduced image so that curved or inclined lines appear inappropriately jagged, caused by the mapping of a number of points to the same pixel. (同一ピクセルへのマッピングによって生じる、曲がったり傾いたりした線が不適切にガタついて再生された画像の歪み)」という意味だとされています。
この歪みは「ジャギー」「モアレ」とも呼ばれます。

ジャギーを減らす

おおまかにアンチエイリアシングとは、エイリアシング(歪み)にアンチ(対抗)する技術だといえます。
一般的には「ジャギー」を減らす手法だと認識されています。このジャギーは「階段効果(Staircase Effect)」とも呼ばれ、キレイに描画された直線でも斜めに傾けるなどすると、ガタガタと歪んで表示されることを指します。

ジャギーは基本的に画質が高くないときに発生します。画質が高くないというのは、その画像・映像を描画するピクセル数が少ないことを指します。ピクセルとはその画像・映像を構成する小さな正方形を意味します。
ジャギーは画質が高くないときだけでなく、どんなに高画質な画像・映像でも、拡大すると視認できるようになってしまいます。

このジャギーを減らすアンチエイリアシング(通称AA)は、イラストなどの絵画分野でも使用されている技法です。なめらかな絵のほうが当然チープさはなくなり好まれるので、ゲームなどの映像分野でもイラストなどの絵画分野でも、アンチエイリアシングは活用される傾向にあります。

高質でないモニターでも有用

ジャギーへの最も根本的な解消法は、解像度を大きくすることです。ゲームでもイラストでも、ピクセル数を多くすれば、ジャギーは発生しにくくなります。
しかしアンチエイリアシングは高くない画質のモニターでも、ゲームもしくはグラフィックボードが対応していれば利用できます。モニターを買い替えなくても設定で変更できるので、アンチエイリアシングは使い勝手のよい技術として認知されています。

実際には高画質なモニターを使用することで解消できるのですが、アンチエイリアシングという疑似的にごまかす手法を利用することで、現在の設備を大きく変更することなく、現状のモニター・グラフィックボード・ゲームを変更せず使用したまま「自分を騙す」ことができるのです。

アンチエイリアシングの種類

アンチエイリアシングには様々な種類があり、自由に選ぶことができます。種類によってはゲームが対応していないことがありますので、注意しましょう。
細かく気になる方は、4gamerPC WatchASCIIなどでも解説記事があるので、読んでみるのもいいでしょう。

今回はNVIDIAの開発したアンチエイリアシングを中心に見ていくことにしましょう。

SSAA

SSAAは「SuperSampling Anti-Aliasing」を指します。
この技術では、ピクセルをさらに分割してサブピクセルとして認識し、そのサブピクセルの色から総合的に元のピクセルの色を算出します。4X SSAAであれば、ピクセルを4つのサブピクセルに分割します。
このSSAAでは4Xであれば4倍の、8Xであれば8倍の解像度を扱うことになるので、とても重くなるのがデメリットです。

MSAA

MSAAはSSAAの発展型で、「MultiSampling Anti-Aliasing」を指します。
この技術では、3Dグラフィックのために「奥行き」を計算しています。サブピクセルごとに奥行きの情報を取得します。
このMSAAは奥行き情報を扱うので、奥行きのない映像では巧く機能しないのが難点です。

FXAA

FXAAは「Fast Approximate Anti-Aliasing」を指します。
この技術では、輝度に注目して周囲のピクセルとの輝度の違いを計算します。
サブピクセルを計算しないため、前述のSSAA・MSAAに比べると軽いとされています。

TXAA

TXAAは「Temporal Anti-Aliasing」の略とされています(厳密には公開されていません)。
サブピクセルによってピクセルを分割し、MSAAでは計算されていなかった隣接するピクセルに対し、TXAAではより広い範囲を計算するといいます。
またTemporal(時間の)という名前通り、前のフレームを参照しているのもこれまでのAAと違う点です。
ここでのフレームとは、fps(frame per second)に代表される「表示される静止画1枚分」を意味します。

NVIDIAのTXAAの公式ページより

なおTXAAは、これに対応しているゲームでないと利用できません。
またKepler世代のGPUのみに対応ということですが、現行の製品であるGTX 1070や1080などのPascal世代でもTXAAが動作している例はあるようです。

Assassin's Creed III PC Technology Video

<TXAA概要:Temporal Anti-Aliasing (TXAA) | Technology | GeForce
<TXAA概要(日本語):TXAA – Temporal Anti-Aliasing | NVIDIA | NVIDIA
<TXAA対応タイトル:Temporal Anti-Aliasing (TXAA) | Games | GeForce
<TXAA対応グラフィックボード:Temporal Anti-Aliasing (TXAA) | Supported GPUs | GeForce

MFAA

MFAAは「Multi Frame Anti-Aliasing」を指します。名称にあるように、「Multi-(複数の)」「Frame(フレーム)」を利用しています。
MFAAではフレームごとにピクセル内でデータを取得する位置をずらしています

GeForce Tech Demo: MFAA

<MFAA概要:MFAA | Technology | GeForce
<MFAA対応タイトル:MFAA | GeForce
<MFAA対応グラフィックボード:MFAA | Supported GPUs | GeForce

アンチエイリアシングは使ったほうがいい?

アンチエイリアシングは、ゲームにおいては設定のひとつに過ぎません。いうなれば「解像度は最大にしたほうがいい?」といった疑問と同様です。答えは、「好きに決めるといい」というのが原則です。メリットもあればデメリットもあるので、基本的にはそのいいところとよくないところを理解して、好みで使い分けるのがいいでしょう。

しかしこういう技術関連や細かい設定に関しては、往々にしてあまり悩まされたくない、と感じても怠惰だとはいえないでしょう。カレーを作る際には、必ずしもスパイスをすべて揃えなくてはいけないわけではありません。しっかりと料理について、食について理解したいのであればそのほうが有用ですが、そうでない人にとっては小難しいというものです。

しかしアンチエイリアシングとは、「ごまかす」という形ではあっても映像をキレイに見せようという技術です。近年の高負荷なゲームをプレイするのであれば、やはりキレイな映像のほうが高い没入感を体験できるでしょう。
アンチエイリアシングの設定を変えることで、ゲームのデータが不可逆的に改変されるということはないので、プレイ中に違和感があるようならばアンチエイリアシングの設定を変えてみる、くらいでもいいかもしれません。

有用だが必須ではない

アンチエイリアシングは、人間にはやや不快に見えるジャギーを減らすということが目的でした。そのため根本的にこのジャギーを気にしない人にとっては、あまり意味のない技術でしょう。
またこだわってアンチエイリアシングを使用してみたところで、その違いについて細かく判断がつきにくい人もいることでしょう(筆者は目が悪いわけではありませんがこれに分類されるようなタイプで、そこまで強くジャギーに関心を寄せるほど悩まされてはいません)。

ジャギーは減りやすい

アンチエイリアシングの基本的な考え方は「ジャギーを減らす」という技術であるだけに、ジャギーはたしかに減る傾向にあります。
しかしジャギーという現象は、映像を拡大するとピクセルごとにガタついて見えてしまうのはしょうがないので、ジャギーを完全になくすことは難しいでしょう。

そうした観点からは、「ジャギーがまったくゼロになるようなアンチエイリアシング」を期待するのは要求が大きすぎますし、「プレイ中に違和感がないなら気にしない」くらいでいいかもしれません。

高質なモニターがあればAAは必要ない

またアンチエイリアシングとは別の「ジャギーを減らす対策」として、高画質なモニターを試用すればジャギーは軽減できると前述しました。いわゆる4Kのような解像度が高くピクセルの多い表示ができるのであれば、ジャギーを視認するような荒い映像は再生されません。
もちろんそうした4Kのような高画質を描画できるグラフィックボードの性能があることが前提です。

いわば、アンチエイリアシングは高性能なモニターを使用していない人向けの機能です。高性能なモニターを使用した上でアンチエイリアシングを設定することもできますが、あまり高性能でないモニターを使用していてジャギーを減らしたいのならば、やはりアンチエイリアシングを使用するのが得策でしょう。

グラボの性能を必要とする

アンチエイリアシングはオプションとして、自由に設定を変えることができます。しかしオプションであるということは、必要不可欠な要素ではなく、ある種「余分なもの」と見なすことができます。
つまりアンチエイリアシングを使用するのであれば、「余分なもの」を使うことになるので「余分な労力」が必要になるのです。
もちろんこの労力を担うのは、グラフィックボードです。

特にサブピクセルを取得するSSAAなどでは、4Xなどの倍率によって負荷が変わります。実質的に4Xの場合は4倍の処理を必要としますので、グラフィックボードに充分な余力がないと動作が滞ってしまうのは目に見えています。

近年の新しめのグラフィックボードであれば、余剰能力もある程度はもっていることが想定されます。ですのでGTX 1070や1080を使用しているのであれば、いくらか思い切ってアンチエイリアシングを使用してもあまりグラフィックボード自体も苦労なく処理してくれることでしょう。

しかし問題は、余剰能力があまり大きくないグラフィックボードの場合です。その場合は通常のゲーム画面を描画することでいっぱいいっぱいで、アンチエイリアシングで映像をキレイに見せるどころの話ではない場合があります。
もしジャギーに悩まされるようならば、単純にグラフィックボードの性能を上げることが推奨されます。

まとめ

  • アンチエイリアシングは、ジャギーという歪みを軽減するため疑似的にキレイに見せる技術。
  • 高画質なモニターと相応のグラフィックボードがあれば、アンチエイリアシングは不要。
  • 様々な種類のアンチエイリアシングがあるが、グラフィックボードの性能と相談して選ぼう。

さいごに

アンチエイリアシングは、ゲームなどの映像をキレイにごまかす手法です。ここまでいろいろと見てきましたが、「映像がキレイとかどうでもいい!」と感じる人には、あまり興味のわかない分野でしょう。
実際のところ、アンチエイリアシングをオフにしても苦でなければ、あまり気にする必要はないといえます。

しかしeSportsなどのゲームを見ていると、俊敏な動きで素早く敵を倒す様が描かれます。そうした華麗な動きを再現するとまではいわずとも自分も強くなれるよう動き回るには、ゲームの腕前も然ることながら映像がしっかりしていることも、重大な要素でしょう。

アンチエイリアシングをどのように使用するかは、どのようにゲームを楽しむかというプレイスタイルにも直結してきます。カードゲームのように俊敏な動きを必要としないのであれば、あまり画質にこだわることもないかもしれません。自分のプレイスタイル、および好みで選ぶのもいいでしょう。

参考サイト

https://www.4gamer.net/games/120/G012093/20121125002/
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/575270.html
http://ascii.jp/elem/000/000/746/746002/
https://www.4gamer.net/games/274/G027467/20141005001/

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