このエントリは2019/4/11に加筆・修正しました。
あまり多くない例ですが、グラフィックボードに関する失敗には「グラフィックボードが折れ曲がってしまう」という報告が見受けられます。こうした失敗を避けるには、自作PC初心者の方はどうすれば良いのでしょうか?
このエントリのポイント
- グラボの重さを考えておこう
- グラボの接続方法を理解しておこう
- 高いグラボを破損させるのは、もったいない!
グラフィックボードが曲がる理由は「重さ」
グラフィックボードが折れ曲がってしまう症状は、ひとえに「グラフィックボードの自重」から発生します。
ハイエンドの高性能なグラフィックボード製品では、GPUを冷やすためにクーラーが付属されていることがあり、リーズナブルな製品よりも重くなっていることがあります。
じゃココロはハイエンドなんだな。
おっと?
褒めてるように見せかけて
DISってるね?
DISってるねキミ?
どうどう、
落ち着いて。
そもそもこうした現象が発生するのは、グラフィックボードがここまで重量が増えることが予想されていなかったことがあるかもしれません。
古いグラフィックボードや、近年のものでも安価なグラフィックボード(たとえばGeForce GT 710など)には小型のものがあります。こうしたサイズのものを見ると、現代のグラフィックボードの大きさに驚かされます。
現在ではグラフィックボードを支える専用のアクセサリが販売されていますし、いずれこの問題に対応した製品が登場することも考えられます。
そもそもグラフィックボードはどう接続されている?
PCを自作した経験に乏しい人は、「グラフィックボードが折れ曲がるって状況がよくわからない」という方もいることでしょう。それは「グラフィックボードがどのように接続され、PCケース内でどのように設置されているか」というPCケース内の配置が知識として定着しておらず、想像がしにくいものと考えられます。
基本的にグラフィックボードは2カ所で接続される
グラフィックボードは、基本的にマザーボードとモニターに接続します。
一般的なPCケースは幅が薄く、高さと奥行きのある細長い形状をしていますが、マザーボードはこのPCケースの壁面にネジで留めるようになっており、その壁面のマザーボードに垂直になるようにグラフィックボードを設置するようになっています。
またモニター側の接続部分は、いわゆるPCケースのおしりの部分にあたり、モニターとグラフィックボードはケーブルを介して接続するようになっています。
そのケーブルとグラフィックボードを接続する箇所は拡張スロットと呼ばれ、PCケースにもともと開けられている穴にフィットさせる形になっています。
すなわちグラフィックボードは壁面(のマザーボード)とおしり(の拡張スロット)の2カ所で支えられているのみで、他の部分では支えがありません。この2カ所にグラフィックボードの質量がのしかかるわけです。
実際のグラフィックボードの例
ではここで実際のグラフィックボードの性能表から、重さを確認してみましょう。
WEIGHT (CARD / PACKAGE) | 903 g / 1470 g |
この製品「GeForce GTX 1080 Ti ARMOR 11G OC」では、パッケージとしての製品の重さが「1470g」、つまり1.47kgあるということです。たとえば1.5kgのPETボトルなどを、両手の指先だけでつまんで四六時中支え続けるとなると、非常な重労働であることが想像できます。
実際には補助電源として電源ユニットに接続することがありますが、補助電源を必要としないグラフィックボードも多く、またグラフィックボードが折れ曲がるという症状にあまり関係ないので省略します。
被害はグラフィックボードだけに留まらない
「グラフィックボードが折れ曲がる」という表現を使用していますが、気をつけていただきたいのは「グラフィックボードが真ん中からぐんにゃりと飴細工のように折れ曲がる」というようなことではありません。
基本的に上述のように支えている2カ所の接続箇所から折れ曲がるという形が多く、グラフィックボードが「傾く」「沈む」と表現しても良いかもしれません。
接続部分で折れ曲がるということは、グラフィックボードのみならずマザーボードや拡張スロットを損傷させかねないということでもあります。
また拡張スロット側は穴にフィットさせたりネジで留めたりする上、多少ずれたとしてもPCケースが歪む可能性が高いくらいで、グラフィックボードやケーブル接続端子が歪む可能性はあまり高くないといえます。
しかしマザーボードとは直接グラフィックボードが接続されるので、こちらが歪んでしまうと対策が難しくなってしまいます。
あー、わかる。
バカのシロートがいると
わたしも被害うけるもんね。
なにいってんの、
俺は誰にも迷惑かけてねーよ?
かけてんのはココロじゃね?
なんでよ!
こんな美少女が
誰に迷惑かけてるってのよ!
ハァ……
迷惑かけられてる側からすると
ため息しか出ませんね……。
マザーボード
グラフィックボードとマザーボードは、現在では「PCI Express」という規格で接続されることが多くなっています。
この規格はケーブルのように取り外しできる仕組みになっていないので、グラフィックボードにせよマザーボードにせよ、破損してしまうと一部分だけを交換するということができません。
マザーボード側の端子が損傷した場合、端子をロックできるようになっていますが、たとえロックしていても広がったり曲がったりしてしまいます。
気づいたときにグラフィックボードを支えるなどの応急処置ができればまだいいですが、歪んでしまった端子を修復するのは難しく、「それ以上広がらないよう不具合が発生するまで耐える」というような不安定で半端な対処になります。
グラフィックボードの接続端子が破損してしまった場合は、基盤が割れることになりもはやグラフィックボードが使用不能になる可能性があります。基盤が割れた場合は、人間でいえば骨が折れたような状態です。
しかしPCは当然ながら自然治癒などせず、往々にして交換する羽目になることでしょう。
しかしいずれにせよ回復の見込みは薄く、最大の対策は「発生しないように予防する」に尽きるということを覚えておいてください。
モニター側(スロットなど)
モニター側の接続箇所で破損する可能性があるのは、「グラフィックボードの(モニター側との)接続端子」「モニターの(グラフィックボード側との)接続端子」「I/Oパネル」の3つが挙げられます。
グラフィックボードの接続端子が壊れてしまった場合は、残念ながらマザーボード側の端子が破損したときと同様に、対処のしようがありません。基本的に予防が最大の対策で、破損してしまったら交換するしかない、と考えるのが妥当でしょう。
破損した接続端子がモニター側、厳密にはグラフィックボードの端子に接続していたケーブルだった場合は、比較的楽に対処できます。
モニターの接続端子の規格としてはHDMIやDisplayPortなどがありますが、この規格でグラフィックボードとモニターを接続するケーブルは容易に購入できます。
もちろん費用はかかってしまいますが、手の出しようがないとすらいえるグラフィックボードの損傷と比べると気が楽なものです。
また拡張スロットが破損した場合ですが、拡張スロットを修復するための代替部品といったものは販売されていません。
かろうじて拡張スロットは、PCケースによるものの、基本的に複数用意されているので、別のスロットに挿し変えるというのも手段のひとつです(しかしスロットの場所とマザーボードのPCI Expressの箇所はそれぞれの製品により決まっているので、この手段も通用しないことがあります)。
「グラフィックボードが折れ曲がる」という失敗を避けるには
今回の「グラフィックボードが折れ曲がる」、現実的には「マザーボードやグラフィックボードの接続端子が歪曲・破損する」という現象を避けるには、どういう手段を講じるのが良いのでしょうか?
この問題に対してもちろんいくつかの答えを提示しますが、私自身あまり納得できてはいません。「どれも有力でない」ということではないのですが、根本的な対策として挙げられるものではないのです。
重いグラフィックボードを使用しない
効果的な対策ではありませんが、「たわむほど重いグラフィックボードを選ばない」というのはひとつの手段です。
可能性を羅列する上では手段として挙げられるのですが、方法はあまり現実的ではありません。
それというのも、「そもそもグラフィックボードの製品によっては重さを明記していない」ことがあり、また「何グラムから折れ曲がる可能性があるのか」というデータに欠けることから、「このグラフィックボードは危険だ」「あのグラフィックボードは大丈夫だ」という正確無比な判断がしにくいという理由が挙げられます。
またこの「重さを原因とした不具合」といった現象ひとつのために、グラフィックボード製品を購入する選択肢を制限するのは、馬鹿げているとすらいえます。
あくまで満足できるグラフィックボードを入手することが目的なので、この対策は実用性に欠けるといって良いでしょう。
重さを支えられるよう保護する
次の対策は「重さに耐えられないなら、耐えられるよう支えればいい」というものです。そのなかでも「自分で支えを作ろう」という考え方です。
インターネット上を探して見てみると、DIYが得意な人には実際に作って使用している方もいらっしゃるようです。
単純なものであればヒモで吊るすだけであったり、長さを変えられる棒で下から支えたりするなど、方法はいくつも考えられているようです。
重さを支えるサポート製品を使用する
こうした問題に関して、メーカーの立場からすると「新しく商品をつくって販売する好機」でしょう。実際やはりメーカーはこの問題の対策となるサポート製品を販売しています。
ビデオカードホルダーなど
「ビデオカードホルダー」と検索するといくつかの製品が出てきます。
この分野はまだ名称が一般化するほど広くありませんし、また共通規格がつくられているわけでもないようです。そのため「GPUブレースサポート」「サポートステイ」「つっぱり棒」など名称が統一されていませんが、グラフィックボードを支えるのには有用なアイテムです。
私はGeForce GTX 1080のグラフィックボードを使用しており、あらかじめこの不具合が発生しているのを知っていたので、形状と価格からCooler Master製の「MCA-0005-KUH00」を購入しました。
しかし高価なグラフィックボードを購入し使用することを考えると、こうした製品を購入させられるのは精神的に大きなコストになるといえます(実際「購入させられる」という感覚がそれを如実に表しています)。
まあでも
こういう製品つかうのが
一番 現実的な対策だよね。
予算に余剰がある場合に有用
安価なものであれば2,000円程度のものがありますが、それですら「余計な買い物」であるのに、4,000円を超えるような製品があるというのには辟易します。
購入を決めた際の正直な気持ちとしては、「たしかに余計な買い物をさせられることにはなるが、高価な何万円もするグラフィックボードをふいにするくらいならしかたがない」というようなものでした。
他の方でもそう思う人はいるらしく、自分で支えをつくるような方がいらっしゃいますが、同様にそれでグラフィックボードを壊すようなことになれば後悔すると考えたので、製品を購入するに至りました。
いくらか予算に余裕がある場合は、こうした製品を利用するのがよいでしょう。しかし最終的な判断は、個々人の好みによるだろうと思われます。
妥協案:グラフィックボードが届いてから考える
以上の策を通じて、私個人の見解としては、「ハイエンドとされる高機能グラフィックボード製品を使用する場合はなんらかの対処をあらかじめ考慮しておく」という前提のもとに、グラフィックボードを購入して到着した後に、実物を手にもってみて大きさ・重さを実感してから決断するのが良いのではないかと考えます。
この妥協案には「自己責任」という考えが強めにはたらいています。
そもそもこの「自重で折れ曲がる不具合」に関しては余計な買い物をするか自分でつくるか放置するかという、いずれの答えを推奨したとしても「無責任」だといわれてもしかたがないものです。
私自身もそうした答えを押しつけてしまって、不利益を被らせてしまうのは本望ではありませんし、それでお叱りを受けるのも当然ながら本望ではありません。
実際に製品を手にして重みを感じて、サポート製品をやはり買ったほうがいいと考えられた場合、もし「せっかくのグラフィックボードをふいにしたくない」と思うのなら、サポート製品が届くまでグラフィックボードの設置を留まることを推奨します。
もちろんサポート製品なしに設置したとしても、すぐ使用不能になるような製品は多くないでしょう。しかしそれはあくまで希望的観測に過ぎませんので、万全を期すのであればしばしぐっと堪えるのを推奨します。
支えを自作するのは有効か?
こうしたグラフィックボードの重さを支えるパーツを買うのは、やはり余計な出費に感じられるのでなるべくなら避けたいところでしょう。そのためそうした支えを自作して済ませられないか、と考える人は少なくありません。筆者も考えたことがあります。
そうした支えの自作は、どれくらい有効だと考えられるのでしょうか?
手先が器用なら試すのもアリ
まず根本的に、そうしたパーツを作成するのはDIY(Do It Yourself「自力でする」の略)に近しい分野だといえます。以前は訳語として「日曜大工」が使われることもありました。どちらも「プロに頼まず自分で作って対処する」という意味合いは同じです。
グラフィックボードを支える手法としては、その重さから下に(重力で)引っ張られるので、それを阻害するために上へ引っ張ることができる要素を構築することになります。有体にいうと、上から持ち上げる方法と、舌から支える方法の2つにわけられるでしょう。
ビデオカードホルダーなどは、下から支える機構です。市販品が上から吊らないようにしているのは、なんらかのミスで支えがズレるなどした場合、その支え自体が落ちて他のパーツを損壊させたり、グラフィックボード自体が傷ついたりすることを避けるためかもしれません。
しかしDIYで自作する人には、紐で吊るなどで満足している人もいます。それがどれほど補強として有効かは計測しがたいのですが、DIYである以上「本人が満足していればそれで充分」だと見なすこともできます。
そのため手先が器用という自負がある、自信がある、またはとりあえず試してみたいなどの主観的な気持ちが強いのであれば、試してみるのもいいかもしれません。
基本的には自己責任
筆者はこうしたDIYとしての自作を推奨しません。筆者は手先が器用ではないのでアドバイスができません。もちろん無駄な出費をしたくない気持ちや失敗への不安はわかりますし、結局失敗して二度手間でくたびれて嫌になる気持ちもわかります。
しかし「追加の出費を抑えたために、本末転倒でもともとのパーツを壊してしまう」というような最悪の結果を避けるために、筆者はビデオカードホルダーを購入しました。
DIYで自作するときは、匙加減が本人の主観になってしまいます。紐で吊るすとしても、そもそもPCケースにはそのような紐を装着することが想定されていないので、やはり不安定になりがちです。定期的にグラフィックボードがたわんでいないか確認するのならばいいのですが、そうせずにいつのまにか紐が落ちていて、グラフィックボードが破損してしまっては元の木阿弥です。
不安なら製品を買ったほうがいい
不安があるのならば、DIYで自作するよりも製品を購入したほうがいい、というのが筆者の見解です。その際たる理由は、DIYで自作をして失敗したときの「ストレス」があまりに大きいからです。数万円もする高価なパーツを、妙な自信でふいにしてしまったら後悔することは必至でしょう。
「生存バイアス」という言葉があります。困難な状況から生き残った人の判断を基準とすることで、「失敗した人の状況」を無視してしまい、「たまたま生き残った人」の状況などを重く判断してしまうことなどを指します。
これは成功者の経験を見聞きすることで、失敗を軽んじてしまう場合などにも適用できます。
DIYは失敗も含めた試行錯誤を楽しむ分野であるともいえます。既製品を買わずとも自力で楽しみながらいろいろなものを作る喜びを味わえる趣味だともいえます。
しかしグラフィックボードの場合は、やはり失敗のリスクがかなり勝ちすぎていると感じられるため、できるならば既製品を買っておくほうが無難でしょう。
既に曲がってしまってたらどうすればいい?
では時すでに遅し、グラフィックボードの重みのせいでたわみ、パーツが曲がったり歪んだりしてしまったらどうすればいいでしょう?
基本的にはパーツを交換するしかありません。
グラフィックボードが割れたり歪んだりするにせよ、マザーボードの端子が広がってしまうにせよ、破損した際に修復するための代替部品のようなものは販売されていません。
修理のしようがないものと考えて差し支えないでしょう。基本的に「打つ手がない」といって過言ではありません。
どうせ「交換して捨てるのならば」と分解して修理を試みて一縷の望みにかけるのも、悪くはないかもしれません。しかし改善の見込みはとても薄いものです。
前述のように「発生しないように予防する」ことが大事です。
まとめ
- グラボが折れ曲がる不具合は製品自体の「重さ」が原因。
- グラボを接続し支えるのは、マザボとモニター側の2カ所。
- その2カ所が破損しやすい部分。
- グラボ・マザボが破損した場合は基本的に交換するしかない。
- どのグラボが安全かを判断するのは難しい。
- 最大の対策は「折れ曲がる前に予防する」こと!
さいごに
この「グラフィックボードの重さのせいでグラフィックボードやマザーボードなどの接続箇所が破損する不具合」には、こうすれば間違いなく対処できるという確実性のある対策を提示できない状態です。
私個人は現状で最良と思われる策を自分なりに決めて、結果的にサポート製品を購入するに至りました。
この問題に関しては「なるべく多くの選択肢を残しておけるよう予防策を講じておく」という無難な策を提示しておくに留めておきます。
その上で情報を精査した上で、皆様が最適と思われる答えを導き出す一助になれば幸いです。