BTOは自由じゃない?! BTOでPCを選ぶデメリット!

グラフィックボード

今回のエントリは、BTOでの買い方を批判的な視点から考察したものです。そうしたものが苦手な方は、読み進めるのを避けることをおすすめします。また少しでもマイルドになるように、茶番をもうけています。そうしたものが苦手な方も、読み進めるのを避けることをおすすめします。

メモリはどれくらい積めばいい? グラフィックボードとの相性
ゲームをPCで遊ぶときなど、よくメモリの量やグラフィックボードの質が問題とされることがあります。このメモリとグラフィックボードの関係にはどんなことが挙げられるのでしょうか? メモリは4GBで大丈夫なのでしょうか? 32GBないとダメなのでしょうか? 用途別で適切なメモリ量についても解説しています。

はじめに

今回は「BTOで選んでPCを買う」という方法について考えていきましょう。BTOは近年ではPCを買う方法としてより一般的になってきています。5、6年前にもBTOで買う手法はありましたが、現在ほど広く知られてはいませんでした。今回はそのBTOで買うことの是非をいろいろな方向から考えていこうと思いま――

うっ、頭のなかで声がする……ッ。「そんな甘っちょろい方法じゃ真実なんて暴けやしない」……? 誰だ……私の頭のなかでそそのかすのは誰だ……ッ! うああああああっ!!!

(どこからか煙がただよい、黒い影がのっそりと立ち上がる)
(聞き慣れたような「ダダンダンダダン」という音がどこからか聞こえる)

――ふーっ。やっと出てこられたぜ。狭っ苦しい場所はもうゴメンだ、フンッ。

おっと、すまない。見苦しいところを見せちまったな。
俺は「筆者の良心」だ。これまではヤツの無駄な話をつらつらと聞かせちまってたが、これからは俺が真実を教えてやる。
だから心して聞く(読む)んだぞ!

ところでなんの話だったか……。そうだ、「BTOで買う」という方法についてだったな。良心であるこの俺が真実を教えてやる……。
BTOを信じるな!

BTOで買うのは初心者しかいない?

BTOはPCを買う方法としては、かなり有用だとされる。しかしどうだ? PCに詳しくて自分でパーツを自由に選び、ミスをおかさずに組み立てることのできる「自作PC玄人」の人たちは、BTOを利用しない! なぜなら自分たちで組み立てることができるからだ。

自分で料理ができて、しかもファミレスより旨く作ることができると自負している人たちが、ファミレスに「食事を楽しみに行く」ことは基本的にない! もちろん人と待ち合わせをするとか、ファミレスの料理を研究する目的で行くことはあるかもしれない。しかし自分の手料理が旨いなら、「手軽さ」がセールスポイントであるファミレスにわざわざ行くことはない!

それと同じで、BTOで買う人たちというのは「自作ができない初心者」もしくは「自作でミスをするのが怖い初心者」だといえるだろう。なんだ、BTOショップというのは初心者を食い物にしてるんじゃないのか~? みんなはそんなところを信用できるっていうのか?!

BTOは自由度が高くない!

そもそもBTOっていうのは、初心者の人たちが思うほど「自由度が高い」ものじゃない! オプションでいろいろ選べるようにはなっている。たしかにそういうシステムで買えるのが、BTOのセールスポイントだ。だがそれは見せかけだ!

BTOは選択肢が多くない!

それにBTOっていうのは、みんなが思ってるほど「選択肢が多い」ものでもない! 考えてみろ、世のなかにはPCパーツが山ほどあるんだぞ? そのなかからほんの数種類ずつピックアップして、みんなの前に見せてるんだ。みんなが注文して、後ろの棚から商品を出すときに、みんなの見えないところで「ひっひっひ、しめしめwww」と笑ってるかもしれない。注意しろ!

BTOで「選ぶ」んじゃない 「選ばされている」んだ!

ひとつ質問をしよう。きみは「投獄されてでもゲームがしたい」か? それとも「投獄されるくらいならゲームをやめる」か? どっちかを選べ!
……はっはっはっ、騙されたな! ものの見事に騙されたな! これは詭弁という人を騙す手口のひとつで、「誤った二分法」という手法だ。現実にはゲームをするのに投獄されるされないは関係ない。だがわざと選択肢を2つに限定した上で、ネガティブな意味合いの「投獄」という設定を加えることで、「投獄されるくらいならゲームをやめるだろ? お前はその程度しかゲームのことを好きじゃないんだな!」と誤った方向へ誘導することができる! 悪魔的な手法だ!

……おい、これってBTOで選ぶときとなんか似てないか? そもそもそんなに選択肢は多くないんだから、本当なら俺たちは好きにパーツを買って組み立てることができるんだ。それなのにその「限られた選択肢」のなかからチョイスすることに安心すら感じる……。おい、これは調教だ! 俺たちは調教されているんだ! 俺たちは思うように自由に選ぶことができるんじゃない! 限られた選択肢のなかから「選ばされている」んだ!!

こんなヤツは信じるな!

わかったか、お前たち。世のなかは食うか食われるかだ。俺がいうことは間違いない。俺はお前たちの味方だ。
……ところで、ここに霊験あらたかな壺があるんだ。100万円だ、安いだろ? これを買うことで「騙されることがなくなる」効果を得ることができるんだ。スゲェだろ!
今回のことでよおくわかったはずだ。世のなかには信じちゃいけないヤツがいるってことがな。わかるな? それが誰だか? そうそれは――!

お前だ! 私の悪しき心め!

うっ! な、なぜお前がここにいる……! お前は心の奥底に幽閉したはずじゃ……!

そうだ。たしかに私は貴様に幽閉された……。しかし悪しき心に屈することはない!

くっ……。もう少しだったのに、もう少しで壺が売れたのに……! チクショォォォォ!

(逃げ去る足音)

……実に危ないところでしたね。人の心は、いい方向にも悪い方向にも向かうことがある。今回は危機一髪でした。しかし教訓として学ぶべきところがありましたね。そうです、あの「筆者の悪しき心」がいっていたように、信じてはいけないものがあるということです。それはまさに、あの「悪しき心」のような者のことです。

こんなヤツは信じるな!:

ネガティブなことばかりを言うヤツを信じるな!
「こいつ不安を煽ってものを売ろうとしてるな」と思ったら信じるな!
言動の怪しいヤツは信じるな!

PCの買い方は3種類

さて、ひとまず落ち着きましょう。三文芝居のような茶番を見せられて、さぞ驚いたことでしょう。茶番のひどい出来のことはとりあえず置いておくとして、「BTOでPCを選ぶこと」について、もっとよく考えてみましょう。

特に「BTOで買う」ということと、他の「PCの買い方」をしっかりと比較していきましょう。PCを買う方法は、おおまかに3種類に分けることができます。

既製品を買う

まずもっともベーシックなPCの買い方は、「既製品」です。これは「すでにPCとして完成した製品」を購入する形式です。内部のパーツの構成などはあらかじめ決定された製品ですので、「PCを買う」という観点からはもっとも簡単だといえます。
特に家電量販店などで買う場合、完成品を現金で購入しそのまま自分で家まで持ち帰る、という「即時的」な買い方ができます。
他にもオンラインショップで購入することもでき、PCにまったく詳しくない方でもパーツの構成などに悩まされることなく買える方法だといえます。

BTOで購入する

BTOはPCのパーツを購入者がみずから選択することのできる買い方です。おおむねオンラインの専門ショップで購入するのがほとんどになるでしょう。
基本的な選び方は、まずCPUやメモリ量(ゲーミングPCならここでグラフィックボードも含まれます)などが個別に設定された製品を選び、さらにメモリ量やストレージ、OS、CPUファンなどを「オプション」としていくつかの選択肢のなかからチョイスすることになります。製品別に見ていくことで大まかなCPU・グラフィックボード・メモリなどを選び分け、さらにオプションで細かく選択していく形式です。

自作する

自作は、パーツを個別に集めて自分で組み立てる手法です。オンラインショップなどでパーツを買うことで揃えることができますし、かつて自分で使っていたPCや故障したPC、また譲り受けたPCなどからパーツを取り出して転用することもできます。
「自作」とはいわれていますが、実際に行うのは「パーツを組み立てる」ことであり、パーツ自体を作成するようなことはありません。またパーツの「修理」なども自作の範疇外で、コンデンサやはんだづけなども行うためむしろ「DIY(日曜大工)」の範疇に近いでしょう。

買い方によるメリット・デメリット

この3種類がPCの買い方として一般的なものです。そしてどの買い方にしても、メリットとデメリットがあります。BTOの買い方が本当にいいのか探るために、それぞれを見ていきましょう。

既製品のメリット

既製品を買うことのメリットはすでにそれが完成されている製品であるために、購入者が行う選択が「その既製品を買うか、別の既製品を買うか」だけで済むことです。BTOや自作の場合は、「この製品を買おう」と決めた後でも、他の細々とした決めなければいけないことがいくつかあります(特に自作の場合は、これが多くなります)。つまり既製品は「これを買う?」の選択を繰り返すだけで購入できます。

いわば「飲食店」での食事がこれと似ています。飲食店では、どのお客さんもメニューから料理を選んで注文します。このとき素材や産地などをお客さんが選ぶことはありません。BTOは素材や産地を選んで、お店で作ってもらう注文のしかたです。自作は飲食店で食べるのではなく、スーパーなどで食材を自由に買ってきて、自宅で調理するようなものです。BTOは素材・産地を選ぶ手間があります。自作に限っては調理する手間がかかってしまいます。既製品の場合は、この手間がすっかり省けるのです。

また前述のように、家電量販店で買う場合は「その購入日に直接持ち帰ることができる」というメリットがあります。インターネットで購入する場合は、やはりいくらか時間がかかってしまうのはしかたありません。
また少しわからないことがあるくらいなら、店員さんに訊ねることができるのも家電量販店のいいところでもあります。

既製品のデメリット

さて、既製品のメリットを確認しましたが、実際のところ既製品・BTO・自作のいずれも経験したことがある人ならば、おそらく既製品での購入をもっとも避けることでしょう。なぜなら既製品を買うのは、BTOや自作でPCを入手するよりずっとメリットが小さいからです。
既製品のメリットは、「楽に選べる」、家電量販店買うなら「店員さんに質問ができる」「即時持ち帰ることができる」ということでした。これらのメリットは、PCを買うときに大したメリットになりません。
楽に選べることは裏を返せば「細かく選べない」というデメリットに繋がります。店員さんに質問できるとしても一から十まで訊ねて「CPUの役割は? 種類は?」「グラボの役割は? 種類は?」「メモリの役割は? 種類は?」「いくらなの? 高い! 別のにする!」などと一時間も二時間も1人のお客さんが販売員の方を拘束することはできません。即時持ち帰ることができるとして、PCを買う場合「自分のほしいPCとは限らないけどすぐ買える」ものと「すぐ手に入らないけど自分のほしいPCを選べる」ものとであれば後者を選ぶでしょう。入手の即時性は、PCのメリットとしてとても小さいものです。

例外として、Mac Bookなど好きな人に刺さるもの、Chromebookのように特定の用途として設計されているもの、ドン・キホーテのPC「MUGA」のようにスペックを度外視した激安PCなど、既製品としてブランディングが成功している製品は、BTOや自作で入手できるものではないので、購入する価値があるかもしれません。

BTOのメリット

次は、BTOのデメリットについて見ていきましょう。

BTOのメリットは、「パーツをある程度選ぶことができる」かつ「プロが組み立ててくれる」という点にあります。BTOの最大の特徴はオプションでパーツの構成を変更させられるところにあります。これはまさに自作のように「自由度」があるということです。この点が既製品とは大きく異なります。さらにオプションで変更した構成を注文することで、プロが「PCとして完成させてくれる」ので、この点は自作と大きく異なります。
BTOの特徴は、既製品のもつ「購入者が組み立てなくてもPCを買える」というメリットと、自作のもつ「自由度」というメリットを併せもっているところにあります。

それに加えて、サポートがあることも見逃せません。自作をする場合は、各パーツが初期不良などで動作しなかった場合などのサポートになり、間違ったパーツを購入した場合などは基本的に返品すらできないことがあります。そのためサポートがあるというメリットも、特徴のひとつとして挙げられるでしょう。

BTOのデメリット

さて、本題のBTOのデメリットについて確認していきましょう。

BTOのデメリットは、冒頭で「筆者の悪しき心(茶番)」がいっていたように「自由度が高くない」「選択肢が多くない」「選ばされている」という点に集約されます。しかしこれは悪しき心が野放図に語っていたような大きなデメリットではなく、それぞれ「『自作ほど』自由度が高くない」「『意外と』選択肢が多くない」「『選ばされている』という感覚に乏しい」という意味合いになります。

まず「自作ほど自由度が高くない」というデメリットは、字のごとく自作と比較しての違いになります。自作では市販されているすべてのパーツが使用候補として挙げられます。それこそ古いものであっても、中古であっても、ジャンク品として動くか怪しいものでも、すべてが候補になります。それに比べると、BTOでは「BTOショップが候補に選んだものからしか選べない」という点は、自作と比べるとデメリットとなりうるものです。

「意外と選択肢が多くない」というデメリットは、自由度が自作と比べると高くないのと同様に、BTOショップが候補に挙げたものからしか選べないので、「オプションで選択可能である」というメリットが、実のところさほど大きなものではないことを物語っています。

「『選ばされている』という感覚に乏しい」というデメリットは、やはり販売者であるBTOショップが選択肢を用意してくれている関係から、実際には「制限された選択肢」のなかから選んでいるにもかかわらず、それが自覚しにくいことを意味しています。自作している人間からすると、その制限された選択肢というものはありありと理解することができます。
たとえば現在NVIDIA製のグラフィックボードには、「RTX 20シリーズ」という新しい製品シリーズがあります。RTX 20シリーズは2018年秋ごろに発表・発売開始された製品シリーズで、それ以前は「GTX 10シリーズ」が最新でした。今ではGTX 10シリーズのいくつかは、オンラインショップでもBTOでも見かけることがかなり少なくなっています。NVIDIAからすると新製品を売りたいという気持ちがあって当然でしょう。それに沿ったように、市場からはいくつかの製品の入手が困難になっています。BTOもやはり新しいグラフィックボード製品を選択肢として積極的にとりあげ、古くなったGTX 10シリーズのいくつかをもはや選択肢としてとりあげないようになってきています。これはBTOを利用するお客さんのために、選択肢が制限されているのでしょうか? 筆者はどうしてもこの点には頷くことができません。

いずれにせよBTOのデメリットは、「限られた選択肢」の1点に集約されます。実際のところ、数多くあるCPU・グラフィックボードをすべて取り上げていたら、BTO製品の数が増えすぎて経営が成り立たないのかもしれません。しかし酷なことをいえば、それは販売者の都合であって、消費者がそれにつきあわなければならない筋合いはありません。

しかしデメリットが1つに集約されるということは、それさえ無視できるのであれば、充分に利用する価値があるということです。
限定されているとはいえいくつか選択肢が用意されているということは、やはり既製品を選ぶのに比べると自由度はいくらか確保されているということです。自作と比較するとデメリットとして感じられることでも、既製品と比較するとメリットとして感じられるのです。
また「選択肢が限られている」ということがその原因ですので、「むしろ限定されているほうが初心者には選びやすい」と捉えることができます。実際のところ、自作をするには選択肢が多すぎてなにがなんだかわからないという初心者の方には、選びやすいところだけをピックアップされていたほうが選びやすいという「メリット」に転換されることもありうるものです。

世のなかにある製品・サービスには、メリットとデメリットが必ずあるものです。しかしそのメリットとデメリットをそのまま無抵抗に受け入れるのではなく、少し視点を変えるだけでメリットがデメリットに、ときにはデメリットがメリットになることもあるのです。

BTOのデメリット:

自作ほど自由度が高くない
意外と選択肢が多くない
「選ばされている」という感覚に乏しい

しかし初心者の人にとって、それはメリットになるかもしれない。

自作のメリット

本題についてはもう確認してしまいましたが、残る自作についてもメリットとデメリットを見ていきましょう。

自作のメリットは、やはり自由度の高さにあります。ふつうPCに限らず家電を含めた機械を買うときは、新しい製品を買いたがるものです。しかし一部のマニアにとっては、古いものでも価値があるとして手に入れたがる人がいます。PCでいえば、現在はWindows 10などのOSの製品が売れ筋ですが、30~40年ほど前のPCである「PC-98」、つまりPC-9800シリーズという製品を今でもほしがり、実際に入手してメンテナンスを続けて使用する人などがいます。こうした「古いものでも入手経路と知識さえあれば組み立てられる」というのが自作の最大の強みです。

この自由度については、さんざんBTOと比較してきました。そしてBTOは自作に比べると自由度はさほど高くないということも確認しました。しかしそれは誤解を恐れずにいうと、「上から目線」なのです。知識と経験をもった人たちからすると、「(自作と既製品の)中間的な選択肢」が、中間であるからこそ中途半端に映ることがあります。しかしこれを「下から目線」で見るとどうでしょうか? つまり初心者、もしくは既製品を購入するしかなかった人たちからの目線です。その目線からは、まず中間的な選択肢であるBTOが「どんな買い方なんだろう? 難しくはないだろうか。面倒じゃないだろうか」とおずおずしながら確認するものに映るかもしれません。そのとき自作は、BTOの先にあるため基本的に視界に入りません。入ったとしても、「うわ、難しそうだな。面倒そうだな。あんな領分に立ち入るのはやめておこう」と感じられるかもしれません。

スポーツ選手には、本人はものすごく技量があっても、教えることは大して上手でないということがあります。それは本人の視点があまりに強く、「教えられる立場」から見ることができないことに原因があります。そこで教えられる人が「最初はできるかもと思ったけど、なんだかぜんぜん届きそうにないな。やめておくか」と考えてしまうことになってしまえば、それは失敗というほかありません。
そのように諦めてしまうくらいなら、やはり中間的な選択肢、PCの選び方でいうとBTOを利用するほうがずっといいでしょう。

他に自作のメリットを挙げるとすれば、自由度が高いことに起因する「自分の好みに合わせられる」「一般的でない使い方も選べる」などが挙げられます。特に「壊れたパーツや取り換えたいパーツがあれば、そのパーツだけ新しいものと交換できる」という点は、大きなメリットとして挙げられるでしょう。ニュアンスは少し異なりますが、「修理」に近い行為です。壊れたパーツ自体を直すのはDIYに近いと前述しました。それとは異なり、修理と呼ぶこともできますが、現実的には「交換」というのが妥当でしょう。厳密には新しいパーツを購入して交換するだけですが、それができるだけでも「実際には一部パーツが壊れただけなのに、PC全体を買い替える」というような失態を避けられるだけでも、大きなメリットです。

少し問題があるとすれば、ピンポイントで壊れたパーツを交換すれば費用を抑えてPCを直せるため、初心者の方が「ダメもと」で挑戦しかねないところにあります。新しくPCを新調することを考えれば、(自分では直せず)使えないPCを完全な故障覚悟でいじることはまったくの無価値ではないかもしれません。もちろんそれが自作に入門する最初の入口にもなりえるので、あまり批判するものでもないのかもしれません。しかし知識・経験の浅い人が無理なことをすると、ケガの原因となりかねませんので充分に注意するようにしましょう。

自作のデメリット

最後は自作のデメリットです。

自作のデメリットは、意外に多くあります。まず「失敗のおそれがある」ことが挙げられます。
おそらくこの点が、自作における最大のデメリットでしょう。失敗してしまうと「買ったものの使うことができないパーツ」として余ってしまうことになりかねません。メモリやストレージのように1つのPCに使用できるものならいいのですが、CPUやマザーボードのように1つのPCに基本的に1つしか使用しないものであれば「失敗→余る」ということになりかねません。実のところグラフィックボードは「2本挿し」のような使い方ができます。いわゆる「SLI」ないし「CrossFire」と呼ばれる機能です。しかしこの機能はすべてのグラフィックボードが対応しているわけではないので、「余ったグラフィックボードを活用する」というその場しのぎに使うには適していません。
また各パーツは別のパーツに接続することで、はじめて「PCの一部」として使用することができるのですが、このときに「接続規格」が合致するかどうかが問題ともなります。規格が合致しないと、根本的に使用できません。場合によっては変換ケーブルのようなものが使えることもありますが、事前にしっかりと規格を確認しておくことがとても重要になります。これは日本語しか知らない日本人と英語しかしらないアメリカ人とでは話が通じないのと似ています。スマホなどで言葉を下手なりに翻訳できれば、なんとかコミュニケーションがとれるというのが、変換ケーブルを使用するようなものです。

次に「めんどくさい」というのがデメリットとして挙げられます。これは怠惰という意味ではなく、各パーツの知識をはじめとして、接続規格を含めたいろいろな知識が必要で、さらに失敗を減らすためには経験も必要になるので、その「学んで実践する行為自体がめんどくさい」ということです。趣味として自作を楽しめる人にとっては、ある種その知識・経験を蓄えることは楽しみのひとつになりえます。しかし特に趣味ではないけれどPCを自由に組み立てたいという意識から自作を始める人にとっては、こうした知識・経験の蓄えは「学習」になってしまいます。学習はときに苦痛を伴います。多くの人が小中高大のいずれか、もしくはすべてで学習に対する苦痛を経験していることでしょう。この苦痛こそが、自作のめんどくささに繋がります。

そして次に、「安くなるとは限らない」という小さなデメリットが挙げられます。自作のメリットとして「安くPCを入手できる」を挙げる人がいますが、これは実のところけっこう怪しいものです。「中古やジャンク品を買うことを含めて最安値で各パーツを購入」し、それらが「動作しない」という可能性を避けつつ、「誤った製品を購入するなどのミス」を完全にクリアし、各パーツを組み立てる、というような成功に成功を重ねることができれば、BTOに比べてもある程度の費用を浮かせることが理論的にはできるかもしれません。しかしすべてにおいてミス・不都合を除外することはリスクマネジメント上、現実的ではありません。あくまで理想にすぎないのです。
そのため「安くなることがあるかもしれない」ということはできますが、「必ず安くなる」とは絶対にいいきれないのです。

全体的な「PCの買い方」のメリット・デメリット:

既製品を買うのは、自由度が一番低い。
自由度が一番高いのは自作。
失敗のおそれが一番高いのも自作。
安さについては、「既製品は安くはない」としかいえない。

BTOで買うのに向いていない人

3つの買い方について、特にBTOについてのメリット・デメリットを確認したところで、次はBTOで選ぶのに向いている人と向いていない人を見ていきましょう。

企業を信用できない人

これまで述べてきたように、BTOとは「制限されていながらも買いやすいように選択肢をピックアップしてくれている」というサービスです。この点において、「じゃBTOの会社が極悪で初心者からお金を搾取するために偽りのチョイスを高値で用意してるってことに違いない」と、ここぞとばかりに悪し様に受け取る人には向いていません。つまり「筆者の悪しき心」のような考えをする人です。これはなにもBTOに限らず、飲食品でもそうですし、電車やタクシー、飛行機を利用するときでも同じです。そうした人たちは、BTOの会社だけでなくいろいろな会社を信用することができません。そうした人たちに会社を信用させるのは、「BTOという買い方がどれくらい妥当か」という話とはまた別です。

コストを限界まで下げたい人

またコストを限界まで下げたい、すなわちとことんまで安くすませたいと考えている人にもBTOは向きません。少なくともBTOには「プロが組み立てる」「サポートが備わっている」という2点から、自作するより人件費がかかってしまいます。企業努力でなんとか下げるとしても、原理的にゼロにはなりえません。そのため限界までコストを下げたいのならば、自作するのが妥当でしょう。

コスパ偏重の人

限界まで安くしたい人と似て、コストパフォーマンスを偏重している人にもBTOは向きません。

コストパフォーマンスは費用(コスト)と性能(パフォーマンス)を合わせた指標ですので、「とにかく安くしたい」というより「一番効率のいい商品がほしい」という考えになります。あまりコスパ至上主義という人はいませんが、もしそういう人がいれば「たとえ高価でもコスパがよければそれを買う」という意志決定に至ります。

これは本人が満足していればそれで充分なのですが、やはり傍から見ていると奇妙に映ります。多くの人にとってコストパフォーマンスは「物差しのひとつ」にすぎず、それが絶対唯一の基準であるとは考えないからです。そのため「たとえコスパがよくても、自分の金銭感覚より高ければ別のものを選ぶ」という意志決定に至るのが、おおよその考えでしょう。

程度の違いこそあれど、コストパフォーマンスをあまりに重視する人には、やはりBTOは向きません。これは上の「コストを限界まで下げたい人」と同様に、基本的に安いものほどコスト面で効率がよく、そのためにコストパフォーマンスも上がる傾向にあります。そしてコストパフォーマンスは選択肢が多いほど効率がいいものを探しやすくなるため、選択肢が限定されているBTOでは「最大コスパ」の製品を見つけるのは難しくなるでしょう。

BTOで買うのに向いている人は?

次はBTOでPCを選ぶのに向いている人について、見ていきましょう。

初心者

初心者の方はおおむねBTOで購入するのに向いています。初心者とは知識も経験も多くない方のことを指しますので、まず自作という遠い目標に準備なしで邁進するのには向いていません。もちろんゆっくりと知識・経験を蓄えながら趣味として自作を始める、という人に関しては、素晴らしい志だと思いますし応援もしたいと感じます。しかしたとえば「まったくPCに触れたことがないけど、PCでゲームができると聞いたので試してみたい」という初心者のなかの初心者の方には、まず自作どうのこうのより「ひとまずPCを手に入れて触ること」が重要でしょう。その点では自作という遠い目標でないならば、既製品でもBTOでもどちらでも構いません。

手軽に行動したい人

PCを買うのに、躊躇することはありません。製品としてはたしかにいくらか値の張るものかもしれませんが、とにもかくにも買って使うことから始めないと箸にも棒にもかかりません。外国の言葉を学びたい、外国に旅行がしたいと考えているなら、いろいろなことを憂慮してしまう気持ちはわかりますが、まずはその国へ行ってみないとわかりません。
最初の第一歩は、重くないといけないわけではありません。手軽に行動したいなら、そうすればいいのです。PCを買うのにも、慎重になっていれば必ず損をせずになにもかもうまくいくわけではありません。ときには大胆に決意しなくてはいけないこともあるでしょう。

そのように足取りを軽くしたい方にも、BTOは向いているといえます。これは自作と比較しての見方です。自作は経験と知識を蓄えねば失敗の確率が高まってしまい、また慣れていても構成を考える時間が必要になります。既製品と比較すると、家電量販店で買えば現金で即時持ち帰ることができるため、より身軽にPCを購入することができます。身軽さに加えて、オプションで選べるというある程度の自由性を兼ね備えているのがBTOです。

自作を趣味にしたいと考えている人

また「ゆくゆくは自作を趣味にしたい」と考えている人にも、ひとまずBTOで購入するというのは、ひとつの選択肢であると提言できます自作というのは料理のように、継続的に続けていくことが大事なタイプの趣味です。ゲームでいえば、数時間~1日で終わるような作品ではなく、RPG・ソシャゲ・対人ゲームのように続けていくことでレベルが上がったり技術が向上したりする作品に似ています。そのため気を張って一大決心、「自作の世界で一番を目指すぞ!」と大言壮語するようなものではありません。ゆる~くなが~く続けていけば、それで充分なのです。だから入口は広くゆったりしていて構いませんし、いきなり自作の世界に飛び込まなければ自作を趣味とする資格が得られないわけでもありません。気軽にBTOでとりあえずPCを購入してから、数年かけてゆっくりと知識と経験を蓄えていけばいいのです。
もちろんその考え方でいけば既製品も入口としては充分なのですが、やはり自作を目指すのであればBTOで注文するくらいは余裕綽々で買ってほしいところはあります。しかし既製品が買いやすいということであれば、本人の選択が尊重されるべきです。

このエントリのまとめ

  • 初心者の人は既製品・BTOで選んだほうがいい。
    • でも既製品はメリットが大きくない。
    • 自作は自由だが失敗のおそれがあり、ややハードル高め。
  • BTOのメリットは、選択肢の幅があり、サポートもある点。
  • BTOのデメリットは、「選択肢が制限されている」こと。
    • 自作と比べると、自由度はさほど高くない。
    • 選択肢が制限されているため、さほど多くはない。
    • 選択肢が制限されている事実に気づきにくい点もある。
  • デメリットは視点を変えれば、メリットに転換することもある。
  • 茶番に関しては軽く受け流しておいてくださいw

さいごに

さて、当サイトは「いかがでしたかブログ」にならないように気をつけていますが、今回はさすがに「あの茶番はいかがでしたか?」と聞きたくなってしまう内容になりました。

茶番は別としても、BTOは「PCを買う選択肢」としてそれなりに優秀なものです。自作をする身としても、「自分がBTOで注文するかどうかはわからないけど、買いやすい手段として人にすすめることはできる」というような位置のサービスです。

今回はBTOを批判的に見る(≠否定的)という観点からでしたので、「選択肢が限定されている」と繰り返し表現しました。これも同じく述べましたが、メリット・デメリットは見る方向によって変化します。みなさんの好きなように見てください。特に趣味のゲームに関するグラフィックボードですから、本人の主観だけで好きに考えて充分なのです。
いずれにせよ、ものごとを選択するときにはミスを減らすために注意するようにしておきましょう。

2019年決定版! ゲーミングPCに本気でオススメできるグラフィックボードとは!?
グラフィックボードを選ぶとき、いろいろな事柄を考えねばならず、初心者の方であればこそ面倒な作業だと感じられてしまうでしょう。そんな方のために、種類がいくつもあるグラフィックボード製品から、元号が令和に改められた2019年もっともオススメする製品を紹介します!
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