人形の首を折る? 折らない? 「点鬼簿行路」

1ツイゲームレビュー
鬱系な青春ストーリーの日本製ビジュアルノベル「点鬼簿行路」の紹介記事です。

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点鬼簿行路 - 無料ゲーム配信中!スマホ対応[ノベルゲームコレクション]
こんばんは! 私は結島高校二年生の鏑木小夏です。お芝居が大好きで、演劇部に所属してるの。今度やる劇は「点鬼簿行路」。このお話は去年卒業した先輩が書いたんだって。部内オーディションで認めてもらえるように頑張らないと!お話に出て来るニュースサイトの記事を、貴方のTwitterのタイムラインに"シェア"す...
タイトル点鬼簿行路
開発丹綿樫
オススメ度A<GOOD>:★★(#1ツイゲームレビュー)
リリース日2020/03/26
価格フリー
次元2D(2次元)
ジャンルホラービジュアルノベル
特徴恋愛/人形/鬱/青春/シングル/マルチエンド/雰囲気
視点
グラフィックアニメ調2D
操作方法マウスorキーボード
言語日本語
インストール不要
ファイル容量178MB<アーカイブ> / 227MB<解凍後>(Version 1.00)

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ツイートより概要を読みたい方は、こちらで飛ばせます。

補足

概要

「点鬼簿行路」は、日本製のホラー系ビジュアルノベルです。ある演劇部の先輩と後輩が織りなす非常に暗い物語が特徴です。

本作の主人公は眼帯をした男子高校生で、彼には「人形の首を折って集める」という手癖があります。また額縁を胸に抱えていて、たまにその絵柄が変わるという不思議な特徴のある人物です。彼には同じ演劇部の先輩がいて、彼女は非常に強く演劇に打ち込んでいます。彼は先輩に思いを寄せてはいますが、人づきあいが得意ではなさそうなこともあってか、距離のとり方に悩んでいるようです。

さて、本作の導入はこのような具合ですが、オススメする前にお伝えしておきたいことがあります。それはこの作品の内容が、非常に暗くショッキングな内容が含まれているということです。そのため体調がよくなかったり気分が落ち込んだりしているときには、その内容に引きずられてしまう可能性がある、ということを注意喚起しておきたいのです。

日本ではあまり多くはありませんが、海外ではストーリー内に自殺などの映像が(たとえフィクションであっても)登場する場合には、「Disclaimer(免責事項)」として注意書きされることがあります。それが不快だと感じる方や、そうしたコンテンツを見ると精神衛生的によくないと判断できる方が見るのを避けられるようにするためです。

本作はそれと似ていて、実際に私はプレイしながら、またプレイを終えたときに、これは人によってはあまりよくない可能性があるな、と感じました。あまり細かくいうのもしつこいので、この点については最後にまとめることとします。

ネタバレありの解説を見たい方はこちらへ

プレイした感覚としては、物語が貴志祐介氏の小説「青の炎」に似ていると感じました。この小説は、離婚した養父が家族の前に現れ、なんとかその父を排除したいと考えた男子高校生の主人公が、父を殺す完全犯罪を目論むものです。これのエンディングが印象的なのですが、そのときの感覚と本作のエンディングが似ていると感じられました。

なお本作はマルチエンドで、エンディングは2種類あります。

オススメ度

「点鬼簿行路」のオススメ度は、Aランクです。Aランクは★が2つ(★★)で、通常の「#1ツイゲームレビュー」と同じくらいのオススメ度を意味します。

本作がAランクなのは、多くのビジュアルノベルの常として「ゲーム性に乏しい」からです。本作はキャラのグラフィックがかなりしっかりしていて、ストーリーも特徴的です。すでに述べたようにストーリー、特にエンディングで気をつけたいところがあるものの、それを加味したとしてもBランクではなくAランクとしてオススメできます。

精神的に余裕がない人は避けたほうがいいかも

ここからはネタバレの情報を交えて本作について解説していきます。見たくない方はご注意ください。

「概要」の項目で、体調がよくなかったり気分が落ち込んだりなど、精神的に余裕がないときは本作をプレイするのを避けたほうがいいのでは、という旨を述べました。

本作にはエンディングが2種類あり、通常のエンディングのほうはおそらくさほど大きな影響はないと思われます。グッドエンディングと思しきもののほうが影響は大きいのではないかと考えます。

ルートによる違いはエンディング前の部分がほとんどのようなので、両ルートで共通している部分は比較的多いようです。

ゲーム内では主人公と先輩がどのような関係にあり、そして先輩はなぜ主人公につきまとうかのように振る舞うのか、がプレイヤーにとってはミステリのような謎に感じられ、それを理解するために読み進めていくこととなります。

なぜ余裕がない人は避けたほうがいいのか

さて、これくらい文章を下げれば見たくない方には見えないでしょうか。ここについて述べるには、本作の中心要素となるネタバレに言及しないわけにはいきません。

それは先輩がすでに死んでいることと関係してきます。物語を読み進めていくと、先輩がどうやら首を吊ってしんだらしいことがわかります。そしてそれは単純な他殺や自殺ではなく、演劇にのめりこんで役を完璧に演じこなそうとするあまり、彼の仕打ちなどに対して悲嘆して首を吊ったものだと思われます。

これは解釈が分かれるところだと思われますが、「先輩に対して体を売ったり殴ったりする彼氏」が本当に実在するかは怪しいところです。そんな彼氏など実はおらず、すべて先輩の異様なほど強い信じ込みでいると勘違いしていた、というふうに見なすほうが話はより悲劇的になり、本作のストーリーは厚みが出ます。特にゲーム内では以下の記述があります。

彼女が演じた「まり子」は薬物中毒の女だった。
悪い恋人に唆されて、次第に薬に溺れていく女。

そして、恋人に捨てられた失意の果てに、首を吊ってしまう女。

先輩のモノローグでは薬物や心ない彼氏の行動が語られます。この一致を偶然と見るか必然と見るかで、物語の解釈が変わるでしょう。

ひとまず悲劇だの厚みだのという演出論は別として、大事なのは先輩がすでに首を吊って死んでいることです。これを理解すると、先輩が幽霊として主人公につきまとっているのか、単に主人公の幻覚のようなものであるかのどちらかの可能性が濃いことがわかります(おそらく後者でしょう)。

次に大事なのは、主人公の「人形の首を折る癖」が「先輩が好きだった脚本の内容に合わせて自殺したから、主人公もそれに合わせて彼女の首を切り落とした」というところから来ている、というところです。

最後に大事なのは、そうした猟奇的な行為に及んだ挙句、(ベストエンディングと思われるルートで)主人公が先輩の日記を見つけ、どうやら実は主人公と先輩が両思いだったことがわかる、というところです。

まとめると、主人公はどうやら両想いだったらしい先輩の死を止めることができず、しかも先輩が入れ込んでいた脚本に合わせたとはいえ、彼女の首を切り落とした、ということです。

このエンディングでは、最後に主人公が脚本を書いた先輩に電話をかけ、その脚本のなかで首を切り落とした恋人の男がどうしたかを聞きます。その答えは細かく明かされはしませんが、以下のようになっています。

その、……演劇部の友達と、そういう話になったんです。
あのあと、どうなったのかなって。

そうですか。
いえ、此方こそ……有難う御座いました。

海か、ちょっと長旅だな……

……じゃあ、行きましょうか。
大丈夫……最後まで、一緒に居ます。

ここでゲームは終わり、「Ending – A 水底の挙式」と表示されます。

ここから推測されるのは、おそらく脚本に書かれていなかった男の選んだ道は、明確に書かれてはいませんが、「自殺」だったということでしょう。そして「海か」とあるので、おそらく入水自殺なのでしょう。そして先輩の首を一緒にもっていく様子が伺えるので、「先輩の首と一緒に死ぬ」という両思いの2人の死を「水底の挙式」だと比喩しているのでしょう。

本作はホラー作品ですが、文章や雰囲気、イラストを含めた作風が「耽美的」です。つまりキレイで陶酔するようなテイストで描かれています。それ自体は素晴らしいことです。耽美的なビジュアルノベルを制作できるのは誰でもできることではありません。

しかしもしこのゲームを「精神的に余裕のない若い10代がプレイしたら」と考えると、マネする人がいないか怖いのです。

日本に限らず世界では自殺についての報道のしかたを、自殺防止の観点からまとめたWHOの勧告があります。これは厚生労働省のページにもまとめられています。なぜこのような情報がまとめられているか、というのは、自殺報道が適切になされない場合、その報道に引きずられて自殺してしまう人が現れる可能性があるからです。

典型的な例として、非常に名前の知られた有名人が自殺したとき、それを大々的に報道してしまうとファンの方などが引きずられて自殺する可能性が増えかねない、と考えられます。

これと同様に、この耽美的な展開で進められる「挙式という両思いの自殺」に憧れてもらっては困るのです。たとえキレイな結末であっても自殺である限り、若い人がそれに引きずられて命を落とすようなことがあってはならないからです。

青春的な物語は素晴らしいと思いますが、キレイであれば内容が残酷でも魅力が強く、引きずられかねないのが怖いところです。当たり前のことですが、どうせ結ばれるならどちらも死んでおらずこれから簡単に死ぬこともなく、水底などでなく地上で素晴らしい挙式をあげるほうがずっとイイのです。そうした「一見明らかなこと」でも表明しておかないと、引きずられて悪い結果になってもらっては困るのです。

誰が困るのでしょう? 私です。あなたです。社会全体が、です。その社会のなかには親御さんたちも含まれます。親族や友人も含まれます。人間の社会は人間のためにあります。そのためそうした形で命が失われるとしたら、社会の一部にとっても社会の全体にとっても大きな損失なのです。

またゲームで自殺者が出るなどすれば、業界も委縮するでしょう。忖度も生まれるでしょう。規制もされるかもしれません。ゲームへの反対意見が大きくなるでしょう。そんなことになるくらいならしっかり注意喚起しておくほうがイイのです。

私が本当に怖れているのは、ここだけです。ゲームのストーリー展開にとやかくいうつもりはありません。ただこれに引きずられて自殺してしまうような方が生涯ゼロなのであれば、私の心配はまったくの無意味です。むしろこの心配は、無意味なほうがイイのです。

今の社会、特にインターネットは誰もが発信者になれる時代です。そんななかで「自分の発言で誰かが死ぬかも」と考えてみると、これはホラーゲームどころではない恐怖です。ゲームをオススメするのであれば、注意喚起もしっかりしておいたほうがいいでしょう。

これは本作に限らず、基本的に「暗い作品」は気持ちが落ち込んでいるときなどには見ないようにしてください。自衛のためです。それに引きずられて自分を傷つけたり他人を傷つけたりするのはよくありません。少なくともこういうフリーゲームはいつでも遊べるので、気分が落ち着いたり余裕があったりするときにプレイするようにしましょう。

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