PCの分野では「自作PC」というパーツを追加したり交換したりできる趣味があり、他のものよりも拡張性が高いといわれることがあります。しかしこれは実際のところどうなのでしょうか? 他のものでも拡張性が充分にあるのではないでしょうか?
このエントリでは、PC(デスクトップとノート)と据え置き型のゲームハードなどを比較して見ていきましょう。
このエントリのポイント
- 「拡張」や「換装」など混同される言葉がある。
- ゲーム機やノートPCよりデスクトップPCの方が拡張性は高い!
- PCパーツの修理は一般的な自作PCの分野外。
拡張性とは?
PCの世界では「拡張性」という言葉が使われることがあり、定義がやや曖昧なこともあって「専門用語」としてわかりづらい言葉に思われるかもしれません。
「○○性」という言葉は、接尾辞(言葉の後ろにつく語)として「~の性質があるもの」というような意味があります。
まずはオンライン辞書を参照して確認してみましょう。
[接尾]名詞の下に付いて、物事の性質・傾向を表す。「安全性」「アルカリ性」「向日性」「人間性」
-デジタル大辞泉(コトバンク、goo辞書)
「安全性がある」ということは「安全である」といいかえることができ、人間らしさがたっぷりあることを「人間性がある」といいかえることができます。
すなわち安全などの「程度」があるものに対して、「安全であること」など「その性質があること自体」を示すものであることがわかります。
そのため「拡張性がある」というのは「拡張できる」といいかえることができ、「拡張性がない」というのは「拡張できない」といいかえることができます。
機能を新しくつけたせること
まずPCにおいて「拡張性がある」ないし「拡張できる」というのは、「新しく機能を追加できる」ということを意味します。
典型的な例は、USB接続の外付けHDDでしょう。HDDは内蔵ストレージとして追加・交換できますが、内蔵ストレージを減らすことなく、新しく外付けとしてHDDを追加できるのです。
またグラフィックボードも「追加する機能」であると見ることもできます。古いPCや安いPCではグラフィックボードが設置されていないことがあり、ゲームをプレイするなどのために新しく設置することができるので、PCは「グラフィックボードを拡張する機能がある」といえます。
ユーザー側でつけくわえられること
また拡張性の意味として、ユーザーが独自に機能を追加できることも含めることができます。
この点で考えると、PCだけでなく据え置き型のゲームハードも拡張性があることがわかります。複数人でプレイできるようにコントローラを増やすことや、VR用のヘッドマウントディスプレイを使用できることは、拡張性の一部であるといえます。
これは単に追加できるだけではなく「ユーザー本人が」という主体性が重要です。たとえば「新しく機能を追加したいなら、PC(もしくはハード)を送ってください。こちらで機能を追加しておきます。方法は教えません」というのはユーザー側の主体性が薄く、秘密主義的な方法といえます。
実際にはもちろんPCもゲームハードもユーザーの考えで機能を追加できます。
この「ユーザーが」という主体性は、自由性といいかえることもできます。そして拡張性という言葉に厳格にこうした意味が包含されているというよりも、「拡張する」という行為自体に「意味がわからないながらも」だとか「強制的に」といったような意味は薄く、「自分の思うままに」という自由性が尊重されやすい方向性にあると見なすのが自然でしょう。
最低限度のパーツ以外はすべて「余剰」
拡張性という観点でPCを見ていくと、「なにが拡張できる部分なのか?」について考える必要があります。その点を深めると、「余剰」という考えに突き当たります。
すなわち「拡張された部分」というのは「最低限必要」だとされる部分以外のことであり、それは「PCを稼働させるのに必要だとはいえない」もの、すなわち余剰だといえるのです。
PCにおいて「必要最低限」という見方は2通りあります。真に「稼働させる」ためだけに必要なパーツたちと、「稼働させた上でPCとして利用する」ために必要なパーツたちとの違いです。
前者の見方では「電源ユニット・CPU・マザーボード・ストレージ・メモリ」が挙げられ、後者の見方では「I/Oデバイス(マウス・キーボード・モニタ)」が追加されます。
ただ稼働させるためだけであれば、電源供給のための電源ユニット、処理をするためのCPU、各パーツを接続するマザーボード、OSなどのデータを保存するストレージ、そしてCPUとストレージの仲立ちとなるメモリで充分です。
実際にPCとして使用するには、操作するためのマウスとキーボード、そしてPCからの反応を確認するためのモニタも使わねばなりません。
HDDもほとんどが余剰
拡張性の例としてUSB接続の外付けHDDを挙げたように、HDDというのはすでに利用しているものがあっても、後からさらに追加することができます。つまり余剰として「必要とまではいえないが容量が多くあったほうが助かるから増設する」という意味合いで追加できるものなのです。
そのためOSデータ以上の容量のHDDは余剰と見なすことができます。
グラフィックボードも余剰
今回は最低限というラインを洗うべく厳しめに余剰という領域を見ていますが、この見方ではグラフィックボードも当然ながら余剰であるといえます。
最低限というラインからすると、HDDはいくらか必要な部分があったのに対して、グラフィックボードはまったくの余剰であり、利用するのはユーザーが拡張性として追加したいときに限られるといえるでしょう。
PCケースも余剰
PCケースは各種パーツを設置する外殻のようなものです。当サイトでは、埃や水分などから守ることは当然ながら、ケガを防ぐ観点などからも、初心者の方にはPCケースを利用したほうがいいと進言しています。
しかし別の観点である「必要か否か」という点からすると、PCケースは不必要といえます。
なぜならこの「最低限必要かどうか」という観点にリスク管理の視点はほとんどなく、「どれくらい長期で」「どれくらい安全に」運用し続けられるかという視点に欠けているからです。
「交換」もできる
また拡張性とは少し異なりますが、当然ながらPCではパーツの「交換」もできます。故障したパーツを交換して再度使えるように直したり、古くて性能が低くなったパーツを新しいパーツに交換して性能を上げたりすることもできます。
「換装」という用語
「拡張性」という言葉と同じく、PCの世界では、特に自作PCの界隈では「換装」という言葉がよく用いられます。
[名](スル)部品や装備を、性能の異なる他の部品や装備に取り換えること。「パソコンのOSを換装する」
-デジタル大辞泉(goo辞書)
( 名 ) スル
あらかじめ装備されている装置・部品を、別のものと取り換えること。 「ハード-ディスクを-する」
-大辞林 第三版(コトバンク)
オンライン辞書によると「換装」とは以上のような意味であることがわかります。現実的には「交換」と大差はないようで、実際にこの界隈ではやや慣習的に使用されることが多い言葉であるように感じられます。
筆者も当サイトで何度も「換装」という言葉を用いていますが、基本的には「交換」と同様の意味合いで用いています。
「拡張」は新しく設置すること
交換とほぼ同義の「換装」と「拡張」とを比べてみると、換装が「すでに設置されているものを別のものと取り換えること」であるのに対して、拡張が「新しくつけくわえること」であるという違いがあるとわかります。その字義からも換装が「装置を換えること」であり拡張が「拡大や伸張させること」であると意味合いが異なり、拡張のほうには「領域を広げる」というニュアンスがあるのが見てとれます。
「拡張」と「換装」が重複することも
しかしときには両者の領域が重複することがあり、拡張という言葉が換装という意味を含むことがあります。「拡張」つまり領域を押し広げることを「新しいパーツを追加する」という意味だけでなく、「新しい性能を付与する」という意味に解釈してもなんら問題ないからです。
そのため拡張(ないし拡張性)という言葉と換装という言葉の意味が重なり、曖昧に使われ続けているためにわかりづらくなっているのです。
PCではなんでも拡張できる
PCはなんでもパーツを換装できます。CPUであろうとマザーボードであろうとメモリであろうと、パーツであればなんでも換装し、また種類によっては同じパーツを複数利用することもできます。
ストレージで内蔵HDDだけでなく外付けHDDも使用することや、条件はありますがメモリやグラフィックボードを2つ利用することもできます。
それに対してCPUやマザーボード、電源ユニットなどは基本的に1つのPCに1つだけです。1つのコンピュータに複数のCPUを搭載するシステムを「マルチプロセッサ」と呼びますが、個人使用のPCでは主流ではありません。マザーボードも電源ユニットも1つあれば充分なので複数は使用しません。
複数利用できるものは「追加(拡張)」、1つだけのものは「換装」するものと見なすことができます(複数利用できるものでも故障したり古くなったりしたものを換装することができます)。換装も拡張であると見なすと、PCのパーツはなんでも拡張できることがわかります。
「プラモデル」や「LEGO」
PCを自作するのは、よくプラモデルのようなものだといわれます。筆者もこの認識には強く同意しています。
プラモデルはあらかじめパーツが別々になっていて、適切なパーツ同士が接続できるように製作されています。基本的に我々はそれを組み立てるだけです。PCのパーツを修理するのは、いわばミニ四駆などを軽量化するためなどに改造するようなものです。
またLEGOとも似ている部分があり、LEGOではブロックに〇型をした突起が上側にあり、それをはめこむ穴が下部にあります。このあらかじめ装着できるように設計されたブロック同士だから繋ぐことができます。
これがもし□型や△型、☆型の突起と穴があった場合は事情が変わります
たとえば「〇型の(突起と穴がある)ブロック」を「☆型の(突起と穴がある)ブロック」に装着しようとしても、物理的に不可能です。これが「互換性がない」ということです。
これに対して「『〇型の穴』と『☆型の突起』をもつブロック」などがあれば、「〇型のブロック」と「☆型のブロック」をそれに装着させることができます。これがPCでいうところの「変換ケーブル」などに該当します。
自作PCとDIY
ただこのとき過大解釈してはいけないのは、「パーツの中身の部品を換装できる」と理解してはいけない点です。これは自作PCの範疇を超えているといえます。たとえば「HDDが壊れたから分解して修理したい」というような考えは、自作PCというよりDIY(Do It Yourselfの略で、プロを介さずに自分の手で工作・修理すること)に近い領域です。
「中を開けて交換する」という意味ではPCの自作もDIYも大差はなく感じられるかもしれません。しかしパーツをDIYで修理する試みは保証適用外ですし、場合によってはケガのもとになります。
いわばパーツはRPGでいうところの「装備」に近いものです。剣士と呼ばれるには剣と防具といった装備が必要なように、PCとして認識されるためにはいくつかのパーツが必要になるのです。
そして剣士と呼ばれるには剣と防具が必要でも、盾や鎧だけでなく兜や篭手などを装備することもあるでしょう。また様々な特殊効果が付与された指輪などのアクセサリを装備することもあるでしょう。
ただし剣や盾、鎧などのアイテムを「分解」することはないようなものです。剣を取っ手と鉄に分解し、盾や鎧も鉄や皮に分解するようなものです。多くのRPGではそのようなシステムがないのと同様です。
(もちろん様々な装備やアイテムを分解して素材に変換し、それを別のアイテムなどにクラフトするシステムのRPGが存在しますが、ここでは不問とします)
もしくは「料理をすること(≒自作PC)」と「自主栽培・ガーデニング(≒DIY)」との違いと似ているともいえるでしょう。自作PCとはすでに「プロが製作し販売しているパーツ」を組み立てるだけに過ぎません。それに直接的に手を加えることはありません。
DIYという分野は自作PCより難度が高く、DIYとして分解・修理するような行為を「PCの拡張性」として認識するのは難しいでしょう。実質的に失敗する可能性が高く、修理しようとして取り返しがつかなくなるどころか、より悪化させてしまうことがあることも「拡張性」といいづらい点となります。
「互換性」という用語
また別の言葉で、PCではパーツだけでなくソフトなどで「互換性」という言葉が使われることが多々あります。この言葉は「換装」の換の字が含まれているように、あるものともうひとつのもの2つを対比して「互いに換えることができる」という性質を示しています。
特にPCでは、OSによって使用できないソフトがあるため、大事な情報になります。
古いOSでは起動できないソフトや、新しいOSに対応していないソフトなどがあります。そうしたものを「互換性がない」もしくは「〇〇との互換性がない」のように表現します。
たとえばスマートフォンアプリの「TikTok」はPCではほとんど使用できません。つまり「TikTokはPC(のOS)との互換性がない(≒使用できない)」と見なすことができます。
上位互換・下位互換
そして互換性という考え方を踏まえた「上位互換」または「下位互換」という言葉もあります。それぞれやはり2つのものを対比させた見方で、そのものと互換性をもちつつ上位に位置するものであるとき「上位互換である」といい、下位に位置するものであるとき「下位互換である」といいます。
これをフランクに使う人たちの間では、自分たちが得意とする分野で同じく活躍していて人気のあるタレントを、自虐をこめて「上位互換」だと言うなどの使い方をされることあります(自分が下位互換であり、そのタレントが今の自分の代わりになることができる、という意味です)。
どんなものが拡張できるの?
拡張性に関する言葉でよく使われるものについてこれまで見てきて、PCにおける拡張性について確認してきました。それでは実際にPCに拡張できるものには、どんなものがあるのでしょうか?
周辺機器
PCに拡張できるパーツや製品には、端的に周辺機器というものがあります。周辺機器という言葉は据え置き型のゲームハードにおいても使用され、やはり拡張性を示すコントローラなどの取り換え品のことを指します。
これらの製品は基本的に同じ接続規格が要求され、もしくは互換性のある接続規格でなければ使用できません。
たとえばPCでPS4のコントローラを使用したい場合、USBで接続することで利用できる可能性があります(すべてが保証されているわけではありません)。
しかしPS2のコントローラはUSB接続ではないため、そのままPCに接続するができません。専用の変換ケーブル・コネクタを使用することで接続できます(広義で互換性があるといえる)。
拡張性に関するバス
周辺機器にかかわらず、なにかとなにかを接続する場合は同じ規格であることが基本です。変換機などを介在させることでその機器を使うことはできますが、仲立ちがあるため質の劣化を避けることはできないからです。
またPCではデータが移動する通路のことをバスと言います。このバスにはシステムバスや入出力バス、拡張バスなどがあります。
この項目では拡張バスに限らず、拡張性の高い現在主流のバス3種について見ていきましょう。
PCIe
PCIe(PCI Express)は、PC内部のマザーボードに搭載されている拡張バスのひとつです。拡張バスは拡張スロットとも呼ばれ、PCIeも同様にスロット状の横長のくぼみがある端子です。ここにPCIe対応の拡張製品を使用することで、PCに機能を追加することができます。
現在PCでゲームをするときに必要とされるグラフィックボードは、このPCIeに接続する製品です。他にもサウンドカードやオーディオカードもPCIeで接続するものがあります(かつて一部のFPSゲームでは音が大事にされていたため、サウンドカードを設置したほうがいいという言説がありました)。
PCIeはPCIという規格の後継であり、これは「Peripheral Component Interconnect」を略したものです。Pのペリフェラルは「周辺機器」を指します。
PCIの後にPCI-Xという規格やPCカードという規格が登場しましたが、現在の拡張バスはPCIeが使われることがかなり多い状態です。
SATA
SATAはストレージバスと呼ばれるもののひとつで、HDDや光学ドライブの接続に使用されるバスです。別名をシリアルATAといい、かつて使用されていたATA(パラレル規格であったため、SATAと区別するためパラレルATAとも呼ばれます)の後継ともされます。
DVDドライブやブルーレイドライブなどの光学ドライブは市販のPCでは「搭載されていて当然」のパーツですが、現在ではインターネットの発達のため音楽や映画をオンラインサービスで気軽に楽しむことができ、手軽なUSBフラッシュメモリやSDメモリーカードの普及により、その重要性はやや低くなってきています。
そのため自作PCでは光学ドライブを使用するかしないかも選択のひとつですし、不要だと思われる機能を減らすことができるのも拡張性のひとつだといえるでしょう。
そしてこれまで見てきたようにHDDは複数使用できるパーツなので、ストレージに使用されるバスとはいえ拡張性は充分にある規格だといえるでしょう。
USB
PCにあまり詳しくない方でもUSBという単語を聞いたことがある方は多いでしょう。現在ではUSB扇風機やUSB加湿器など、PCの拡張性と関係のない製品に使用されるくらい定着した規格で、USBはかなり定着したバスであるといえます。
「Universal Serial Bus」の略であり、やはりバスの一部であることがわかります。
Uのユニバーサルは「一般的」「普遍的」という意味があります。またSのシリアルは、USBがシリアル規格であることを示しています。
PCでのUSBポート(受け口はポートと呼ばれます)は、フロント(前部)とリア(後部)に存在することが多くあります。どちらにも複数搭載されていることが多く、あまりPCを使用する頻度が多くないのなら初期のポート数で充分だといえるでしょう。
USBハブという製品を使用すると、USBポートを増やすことができ、さらに拡張性が高くなります(タコ足配線と似ています)。
またUSBには転送速度などによって世代がいくつかあり、普及数の多い2.0(端子が白もしくは黒)、転送速度の向上した3.0(端子が青)のものなどがあります。
パラレルとシリアル
SATAやUSBのSがシリアルであることは前述しました。これは転送方法による区分で、もうひとつの方法をパラレルといいます。シリアルは直列を指し、パラレルは並列を指します。
今回は細かく紹介しませんでしたが、パラレル規格のSCSI(スカジー)やこれをシリアル化したSAS(Serial Attached SCSI)という規格もあります。
パラレルバスでは複数の信号を同時に並列させて送ります。シリアルバスでは信号をひとつずつ直列的に送ります。
同時に複数流すのと一度にひとつ流すのとでは直感的に複数流すほうが早いと感じられるように、かつてはそう考えられていました。
しかし実際には、パラレルバスで同時に複数の信号を流すと、漏話(クロストーク)と呼ばれる信号の混戦が発生し、パラレルバスではスムーズな情報の伝達が難しいことがわかったのです。
デスクトップとノートでの違い
ここまで単にPCとしか言及してきませんでしたが、ご存知の通りPCにはデスクトップPCとノートPCがあります。どちらもWindowsなどのOSを使用し、PCゲームをプレイすることのできるPCとして(スマホなどがそうではないのに対して)共通している部分があります。
それではデスクトップPCやノートPCは、拡張性においてどのような違いがあるのでしょうか?
ノートPCは携帯性を重視
ノートの大きな特徴は「持ち運びができる」という点です。この携帯性はスマホにも共通していますが、デスクトップとノートの(PCとしての)類似性と、ノートとスマホの(携帯性という程度の)類似性は、程度が大きく違います。スマホは機械として類似していますが、PCと呼べるものではないからです。
ノートでは、充電して常にコンセントに繋がなくても電力供給ができるようになっていたり、キーボードや(マウス代わりの)タッチパッド、モニタなどのI/Oデバイスを一体化させて持ち運びしやすいようになっていたりします。デスクトップではケース自体が大きく、コンセントは常時接続せねばならず、マウス・キーボード・モニタといったI/Oデバイスが分離しており携帯するのが重労働で面倒です。
このように携帯性という点で見ると、違いが一目瞭然です。
携帯性のために犠牲にされているものがある
しかしノートはこの携帯性に特化するという特徴を手に入れるために、別のものが犠牲にされています。それは「拡張性」と「性能」です。
拡張性
まずノートはあまり拡張性が高いとはいえないといわざるをえません。なぜなら拡張性の根本的な意義である「拡大や伸張させる」という行為は「余剰のスペース」がないと実現できないからです。家をリフォームして大きくするには、まず大きくできるだけの土地がないといけないのと似ています。それに対して携帯性とは基本的に「小さくする」もしくは「軽くする」ことによって実現されます。そのため携帯性と拡張性はいくらか相反する考え方となってしまいます。
ノートによってはある程度の拡張性を確保するため、底面の一部が開けられるようになっていてメモリやHDDを換装できるようになっているものがあります。しかしそうした拡張性を考慮しておらず開けられないようになっているノート製品もあります。
もちろんそのような場合でも、USBポートが搭載されていればUSB対応製品で拡張することはできます。
ノートで考慮されている拡張パーツは、せいぜいメモリ・HDDとUSBポート、そしてSDメモリーカードのスロットやLANポートなどでしょう。これらはデスクトップであれば容易に拡張できます。
またデスクトップで乾燥できるCPUやグラフィックボードは、ノートでは基本的に換装できる設計になっていません(キーボードを外すなどかなりの部分を分解しないとCPUにアクセスできません)。
こうした点からノートは拡張性を犠牲にしていると見なせます。
性能
また性能についてもいくらか犠牲にされているといえます。これは性能だけでなく価格も視野に入れているので、「予算が捨てるほど余っている」などの場合には無視できる程度のものです。しかしほとんどの人がそうではないため、無視できないくらいの犠牲と認識する他ないのです。
ノートで使用されているCPUやグラフィックボードは、デスクトップのものと異なります。モバイル用として使用されているものであり、デスクトップのものを使うことはかなり難しいでしょう。
細かくは同質のものを比べにくいため厳密な優劣を比較するのは難しいのですが、ノートはデスクトップよりも高額になりがちな傾向にあります。
デスクトップとの比較
それではノートをデスクトップと比較してみましょう。
拡張性はデスクトップのほうが優秀
まず拡張性は、前述のようにノートはあまり高くありません。スマホと比べると勝ってはいるのですが、拡張性においてノートはデスクトップに敵うべくもありません。
各パーツをノートサイズまで小さくしても性能が変わらないほど技術力が上がれば、いつかは携帯性と拡張性を確保することができるかもしれません。しかし現在ではそれほどの技術はありません。
性能もデスクトップのほうが優秀
性能もデスクトップのほうが有利でしょう。もちろん価格も考慮した上であることは変わらないので、充分な費用を出せばデスクトップと遜色がないくらいの性能のノートを手に入れられるかもしれません。しかしあくまで近いという程度であって、まだ肩を並べるほどとはいえません。
携帯性はノートのほうが優秀
しかしノートのコンセプトは携帯できるPCであるため、やはり携帯性ではデスクトップに劣ることはありません。
そもそもノートはビジネス用途であることが多く、技術の向上によりゲームもプレイできるほどになったため、ゲームもプレイできるノートが発売されるに至りました。
しかし価格・予算をも考えて「ゲームをする」のであれば、ノートの携帯性とデスクトップの性能とどちらをとるべきかよく考えるようにしましょう。
ゲームハードと比較すると
これまではPCの環境を主に見てきましたが、最後の項目ではさらに理解を深めるために、ゲームの据え置き型ハードと比較して、周辺機器とはなにか、また拡張性とはなにかについて再確認していきましょう。
I/Oデバイス(コントローラ)は周辺機器
まずゲームの周辺機器としてすぐに思い浮かぶのは、やはりコントローラです。コントローラはPCでいうところのI/Oデバイス(マウスやキーボード)であり、プレイヤーがもっとも多く触れるパーツです。
故障したコントローラを交換したり、好きな色のコントローラに変えたりできるのは、「換装」としての拡張性だといえます。
またマルチタップを利用するなどで同時接続数を増やすことができ、スーファミでは最大5人、セガサターンでは最大12人、PS2では最大8人、PS3ではBluetoothで7人が同時にゲームをプレイできるということです。これは先述のUSBハブでポートを増やす手法と似た拡張性だと見なせます。
グラフィックボードも周辺機器
PCではグラフィックボードも取り外しができ、追加できることも然ることながら不要だというなら使用しない選択もできる拡張パーツであり、周辺機器であるといえます。PCでゲームをしない代わりにグラフィックボードを使用しない選択ができます。
もちろんゲームハードは「ゲームをするための機械」であり、またグラフィックボードに相当する内部のパーツを取り出ことはできません。無理に実行しようとするのは保証適用外となる重大な行為です。
HDDも周辺機器
近年のゲームハードで使用されるHDDも、PCと同様に「必要最低限」以上のものは余剰であり、周辺機器として認識することになるでしょう。
ゲームハードでいうと、最低1つのゲームタイトルをインストールできる容量さえ確保できれば、あとはアンインストールとインストールを繰り返せばやりくりできるはずなので、多めのHDD容量とは「贅沢」であるともいえます。
古いゲームハードではそもそもHDDがなくメモリーカードなどの記憶媒体を使用することになります。もっと古いスーパーファミコンではソフトカセットに直接記憶させるため「記憶媒体を拡張する」ことができませんし、ファミコンではパスワードを代用するなど「記憶すること自体ができない」という状態で、現状から考えると「拡張性がかなり低い」ものだったことがわかります。
ゲームハードよりPCのほうが拡張性が高い
ゲームハードとPCを比べると、「グラフィックボードを安全に取り外しできるかどうか」という拡張性がわかりやすいでしょう。保証という観点も然ることながら、PCは「ゲームを遊ぶ」という用法以外にも使い方があるのに対して、基本的にゲームハードは「ゲームを遊ぶ」という目的だけに特化させられています。PCでは自由にグラフィックボードを拡張・除去できます(=拡張性が高い)が、ゲームハードでは行えません(=拡張性が低い)。
たとえばゲームハードでMicrosoft WordやExcelを使用することはできません。プログラミングなどもできません。またsteamなどのPCゲームのうち対応ハードで対応していないゲームも、基本的にはプレイすることができません。
かなり強引な方法を駆使するなど、使用できる可能性がゼロであるというわけではないようですが、それでゲームハードが故障しても保証外となるおそれがあるのでもちろん推奨されません。
ゲームハードでインターネットブラウジングをするなどは当たり前になってきていますが、それでも基本はゲームを遊ぶための機械なので、あくまでそちらは補助的な機能と見るべきでしょう。
やはり互換性という観点からも、公式にサポートされたプラットフォームで使用するのが基本的・一般的・常識的だといえます。
まとめ
- 「拡張」「換装」などの言葉は混同されることがある。
- 「拡張」は新しく機能を追加すること。
- 「換装」は既設のものを別の装置と交換すること。
- 自力での修理などは「DIY」に近く、「拡張」とは別物である。
- 周辺機器は拡張性の証。
- 同じ規格であることが大事。
- 拡張性の高いバスには、PCIe・SATA・USBなどがある。
- ゲーム機やノートPCよりデスクトップのほうが拡張性は高い。
さいごに
PCは総合的には、かなり拡張性の高いものだといえます。これはPCではなく「機械」と抽象的に考えれば、デスクトップ・ノート、そしてゲームハードのどれも拡張性があるものだと認識できます。つまり機械は拡張性が高い、ということになります。
人間は自分を拡張するとき、身体的には「鍛錬」もしくは「栄養管理」をするくらいであり、精神的(知的)には「勉学」や「心を広くもつ」「人に優しくする」などのものになるでしょうか。
PCのように購入した製品をくっつければ新しい能力が習得できる、というようなことはできず、SFなどであるくらいでしょう。
もちろんUSB接続の製品であるように、PCに接続しなくてもよさそうな製品などは、拡張性という観点では利用価値は高くないでしょう。しかしその有用性がそれだけ認知されている証でもあり、またそれだけ非実用的なものが登場するというのは余裕があり懐が深い表れでもあるのでしょう。
そのなかでもグラフィックボードなどの高価な製品は、やはり曖昧に使用せずに目的をしっかりもって使用するほうが、使う価値もあるというものです。
PCは拡張性が高いのは事実ですが、利用するのはあくまで人間なので、しっかりと目的を意識して利用するようにしましょう。