こんにちは、Caffeineです。
今回ご紹介するのは日本のRPGツクールVX製フリーゲーム「獄都事変」です!
どんな人向け?
フリーゲームやインディゲーム初心者の人
難しすぎず怖すぎないゲームが好きな人
進 – Advanced
前回の基礎情報に引き続いて、今回は「獄都事変」のオススメ(メリット)とイマイチ(デメリット)な点を確認していきましょう。
「ここがオススメ!」
まずはオススメであるメリットについてまとめていきましょう。
全体的に完成度が高い
この「獄都事変」の全体的なよさは、「完成度が高い」というところです。目立ったバグがなく、素人くさい妙に音程の外れたストーリー展開もなく、非常に安心して落ち着きながらプレイすることができます。
作者の方がどういう経歴でこの作品を制作されたのかはわかりませんが、非常に丁寧な作りのゲームとなっています。
フリーゲームやインディゲームというと、なにかと「習作」というイメージがつきまといます。バグが散見される作品もありますし、ゲームとしてそもそも楽しくない作品もあることでしょう。
その点について考えると、完成度が高いこの「獄都事変」は習作のイメージがほとんどありません。
日本で有名になったフリーソフトには、「システムがおもしろいもの」と「丁寧な作りのもの」におおまかに分けられるかもしれません。そうした分類からすると、この「獄都事変」は後者の丁寧なつくりのものだといえるでしょう。
キャラが立っている
この「獄都事変」では、主要キャラクタである「獄卒」たちの人となり(人?)がとても際立っています。それぞれ特徴のある性格をもっており、セリフの言い回しを見ているだけでも楽しいものがあります。
声色を使い分けることができる実況者の方などにとっては、見せ方次第でより楽しいコンテンツにすることができるかもしれません。
世界観が独特
ホラーゲームでは異空間に人間が迷い込むなどする物語は多くありますが、そもそも操作するキャラクタが「人間でない」ものはやや珍しいものです。おそらくその理由は、ホラーゲームは「主人公が襲われる恐怖」≒「プレイヤーが追体験する恐怖」と近似させられるため、主人公は人間にしておくほうが親和性は高くなるのでしょう。
やや無慈悲な一面が見られる獄卒たちですが、温厚な佐疫などを見ているとそれが単に「一面」にすぎないこともわかります。1~3時間でクリアできるボリュームのゲームですが、世界観および獄卒のキャラクタ性を安定させているのは見事だというほかありません。
怖すぎない
この「獄都事変」はホラーゲームにもかかわらず、あまり怖くありません。怖いものは好きだけど怖すぎるものは苦手、という方にはオススメできる作品です。
その理由はやはり「主人公たちが人間ではない」というところが大きいのでしょう。(ほぼ)不死身である上、怪異が発生する不気味な校舎にいても極卒たちは揺るがない個性をいかんなく発揮するため、不気味さがマイルドになっています。
怖さを求めホラーゲームというジャンルに惹かれた人は、やや拍子抜けするかもしれませんが、万人受けするタイプのゲームだといえるのかもしれません。
謎解きが難しすぎない
ホラーゲームといえば探索や謎解きがつきものですが、この「獄都事変」の探索・謎解きはさほど難しくありません。インディゲームには難易度調整がズレていて、ヒントなしでは謎を解けなかったりアイテムを見つけたりできないことが、間々あります。
しかしおそらくこの「獄都事変」では、しっかりと難易度調整がなされているのでしょう、謎解きで詰まるということはあまり多くないのではないでしょうか。ところどころに様々なパズルが用意されていますが、比較的サクサクと進めることができます。軽快に進めていきたい方にはオススメできるでしょう。
攻略情報が公式サイトに掲載
またもし探索や謎解きで迷ったり詰まったりするようなことがあったとしても、公式サイトに攻略情報が掲載されているので、それを参照すればトゥルーエンドを容易に見ることができます。
歯ごたえのある難易度を求める人には迫力が欠けたものと映るかもしれませんが、完全クリアが容易なので手軽に全体の雰囲気を感じることができるでしょう。
簡単に遊べる気軽さ
本作「獄都事変」の魅力を一言で表すなら、「初心者の方でも気軽に楽しめる」というところでしょう。ホラーゲームとしても探索ゲームとしても非常にマイルドで、あまり慣れていない方がプレイすれば、フリーゲームやインディゲームへの印象がよくなる可能性が高い作品です。
たしかに遊びやすいよね。
これを最初にプレイしたら、
他にもおもしろいフリーゲームがないか
探したくなりそう。
獄卒たちのキャラクタ性も
非常にキャッチーで楽しいですからね。
フリーゲームやインディゲームの入口として
初めての方にオススメしても
いいかもしれませんね。
「ここはイマイチ……」
続いてイマイチともいえるデメリットについても見ていきましょう。
盛り上がりに欠ける
まず全体の雰囲気に言及すると、盛り上がりに欠けるという点がイマイチだといえるでしょう。
これはこの「獄都事変」の複合的な雰囲気が影響しており、主人公たちが人間でないため迫力に欠けること、謎解きが難しくないこと、ストーリーがややアンチクライマックスで尻切れであること、などが絡み合って「淡白」に感じられることがあるかもしれません。
さほど怖くない
ホラーゲームのキモはやはり「怖い」もしくは「驚かされる」ことですが、少なくとも私はこの「獄都事変」で怖いと感じさせられたり驚かされたりしたシーンはひとつもありませんでした。これは人によって感じ方が異なるので一概にはいえませんが、いずれにせよかなりマイルドな恐怖演出であるとはいえるでしょう。
謎解きが難しくない
探索や謎解きがあまり難しくないというのも、ゲームを楽しむ上では考えものです。歯ごたえがない易しい探索・謎解きなので、ゲーム性にやや乏しく、こうしたRPGツクール製の探索ゲームに慣れた人なら印象に残りづらいともいえます。
マップの移動が煩雑
また探索ゲームであるにもかかわらず、マップの移動が煩雑で手間なのも難点だといえます。
この「獄都事変」はおおまかに前半と後半に分けることができるのですが、前半ではマップがどこも似た見た目であるため、今自分がどこにいるかわかりづらく、また次のイベントを起こすためにマップを行き来するのがやや苦痛に感じられてきます。
また後半ではマップの形状が著しく崩れ、移動しづらくなります。攻略のためにはいくらかマップを行き来しなければいけないため、「マップを行き来する楽しみに乏しい」RPGツクール製のゲームでは、往復を繰り替えさせられるのは楽しみを減らす結果に繋がりかねません。
表と裏
本作「獄都事変」の「イマイチ」な点は、ほとんど「オススメ」な点の裏返しです。
世界観が独特で獄卒というキャラクタが立っているからこそ、恐怖感が薄れてしまっています。多くの人が遊べるような恐怖度・難易度の低さであるがために、ゲームに慣れている人には「ぬるく」感じられてしまいます。短いボリュームながら全体的に完成度が高いので、「小さくまとまっている」と感じられてしまいます。
フリーゲームやインディゲームは、アイディア勝負であったり表現が独特であったりすることが魅力になることもあります。それに対して大企業のゲームは、ハズレが少ないかわりにアタリにもならないものが発表されることがあります。大企業であればプロとして営利目的にならざるをえないので、そういうこともあるでしょう。
そうした点からすると、完成度の高さは商用にしても問題なさそうなくらいのクォリティです。しかし「トゲのなさ」「トガリのなさ」についてもフリーゲームとしてのよさがやや損なわれているように感じられます。
このような見方をすると、商用ゲームと非商用ゲームのいいところと悪いところをそれぞれ兼ね備えた中間的なゲームだともいえるかもしれません。
私個人としてはトゲのある特徴的な作風のほうが好きなため、フリーゲームやインディゲームであれば独特な作品をつくってほしいと考えています。しかし独特な作品をつくってコケても、もちろん私は責任をとることができません。作品はあくまで作者のものですので、トゲを先鋭化させるのも、よりマイルドにさせるのも、同じ路線で突き進むのも、作者次第というほかありません。
少なくとも本作「獄都事変」にいえるのは、万人受けするような多くの人が落ち着いてプレイできる柔らかさが特徴です。ホラーゲームとしては「雰囲気重視」の部分がありますが、しっかりとホラーゲームというジャンルに収まる程度には調整されています。フリーゲームやインディゲームに慣れている人には物足りなく感じられるかもしれませんが、無料のゲームですのでいろんな人がプレイしておのおのが「獄都事変」を楽しみ、こうした作品の在り方を考えてみるというのもおもしろいかもしれませんね。
俺はゲームにはバトル求めるから
ちょっと退屈なところあったけど、
まあたしかに完成度高くて
遊びやすく感じる人は
多いだろうなー、って思う。
そうですね。
初心者の方への入口に
なりうる可能性を考えると、
かなり価値はあるでしょうね。
次のエントリ
次回は「獄都事変」の「プレイ感」について記していきます。ネタバレを含めた建設的批判を試みます。