こんにちは、Caffeineです!
今回はややぶっきらぼうながらピギュラの心配をよくしてくれる兄貴分ジーキルと、その弟分ヒロについて焦点を当てていきます!
ヒロの真実
ヒロは非常に謎に包まれた人物です。風貌は人間なので自覚しているキャラクタのようなのですが、他の自覚しているキャラクタと違って情報がなにひとつないのです。食べ物を食べたときの幻で彼に該当するものが見つかりませんし、「はないちもんめ」などにもヒロの名前は出てきません。
そして他の自覚したキャラクタたちはおおむね幽霊を怖がらない(なぜなら自分たち自身が死んだ存在だと知っているから)のに対し、ヒロは幽霊をとても怖がります。もちろんこれは「ヒロだから」ではなく、「ヤンキーキャラだから」というゲーム演出上のキャラづけなのかもしれません。女性キャラには少し怯える描写もあるので、決定的とはいえません。
いずれにせよヒロに関しては情報がありません。考察するには情報が大事ですので、ヒロについてはなにも考察できないようなものと捉えるしかないでしょう。
ジーキルの真実
ジーキルは生前の出来事がわかりづらい人物です。その理由は、ゲーム内で見せられる幻や語られる話はどれも、なんらかの住人と紐づけられるような特徴が見受けられるからです。
たとえばルナ・サナであれば「姉妹」、ガルルであれば「パン屋」などです。しかしジーキルにはそもそもそうした特徴的な要素が「修理屋」しかありません。外見的な特徴がこれといってなく、ヒロが慕ってはいるもののいわゆる「ワル」とも断言しづらい人物です。このように、やや没個性的なところがある人物なので、ジーキルに関する情報があったとしても、彼のものだと関連づけるのが少し難しい人物なのです。
アカの本『待ち人』
それでも可能性を挙げるならば、ギャラリーにある「アカの本『待ち人』」がジーキルのものかもしれないといえるでしょう。内容は以下の通りです。
この町に来てから、もう随分経った。
俺に記憶が戻ってからも、もう随分経った。
記憶が戻る前の名前や姿は、あまり覚えてない。
牢の中での絶望感、人への不信感。
全部思い出した。そして俺は自分に戻った。
あんな記憶なんて、また消してもらった方が
良かったのかもしれない。
ただ、この姿でこの町にとどまって、
昔のダチや知り合いが来るのを待つ。
それも、面白い気がした。
俺を犯人に仕立て上げたヤツらの顔も、
全員思い出したことだし。
もしヤツらがここに来たら、たっぷりと
お返しをしてやるとしよう。
この本の記述で注目すべきは、「牢」という言葉です。この「牢」という言葉は、次に示す「はないちもんめ」でジーキルの家・地下室を見たときの様子に繋がります。
はないちもんめ<牢に似た地下室>
「はないちもんめ」でジーキルになって彼の店の地下室に入ってみると、そこは牢屋のように鉄格子と簡素な洗面台、ベッドなどが置かれています。ジーキルの自宅は他のキャラクタに比べると地味なので、これがヒントとはわかりにくいところですし、実際にヒントなのかどうかも少し怪しいところではあります。
このジーキルの住居を見ると、やはり彼らにとって「快適」な部屋になっているとは限らないようです。勝手に決まってしまって、模様替えすらできないのかもしれません。生前の出来事が意思とは別に表れてきていると見なすのが自然でしょう。
凶新聞
この「牢」という言葉から連想していくと、凶の都の「凶新聞」にとある事件の記述があるのに気づきます。関係性の強さはどれほどか怪しいのですが、それもジーキルに関係しているように見受けられます。
●年、●月●日。
先月から起きている連続殺人事件の速報。
一昨日、新たに2名の遺体が発見された。
場所は、郊外にあるノースポールの花畑。
被害者は、その近くで喫茶店を営む夫婦(妻45)(夫48)。
近隣には警察署が多数あり、人通りも
多い時間帯のはずだが、相変わらず、
目撃情報はよせられない。
とはいえ、この事件は、
真犯人が公になることなく、近いうちに収束するだろう
犯人はもう、警察の手によって準備されている。
冤罪
この凶新聞の内容から重要な要素をまとめるなら、「冤罪」でしょう。被害者についての記述はジーキルについて考察する上ではノイズになるので、今はあえて除外して考察しています。
その上で「真犯人」と「犯人」という言葉の使い分け、そして「警察の手によって準備されている」という記述を見ると、冤罪についての記事だと捉えるのが素直でしょう。
なぜ警察がそのようなことをこの事件でしようとしたのか、そこまではわかりません。警察が単にそこまで腐敗していたのかもしれませんし、この事件に関しては他の事件以上に譲れない点があったのかもしれません。この凶新聞の内容が事実なのであれば、いずれにしても警察の行いが正当化されることはありませんが。
この凶新聞から「冤罪」という要素を抜き出してみると、先述の「アカの本『待ち人』」の内容についても理解が深まります。本の記述だけなら一方的な怨恨と捉えることもできますが、この凶新聞の情報を交えると、ジーキルは無実ながら投獄され、なんらかの原因で亡くなったものと考えられます。
本の記述にある「お返し」がどの程度の復讐になりうるのかは、本人にしかわかりません。
和歌での「檻」
なお各箱庭から輪廻道へ行くときの和歌を介して移動しますが、ビル街から輪廻道へ行くときの和歌に「檻」という言葉が登場します。
色も無く 繁く来たるは檻の内
息吐けぬまま 頽れる生
牢と檻はかなり似た存在ですので、関連性を考えてみたのですが、意味的にはあまり通じないようです。ジーキルはビル街に特別な思い入れはないようですし、この和歌はビル街の住人たちのように働き詰めの生活を送る日本人を揶揄したものと思われます。ジーキルとの関係はあまりないと考えられます。
なおこの和歌の考察は、こちらの記事で行っています。
名前
ジーキルの名前はおそらく「Jekyll」だと思われます。しかしこの名前からだと多くの人が、小説「ジキル博士とハイド氏」が思い出すのではないでしょうか。
これは1880年代に発表された小説で、いわゆる「二重人格」を扱った創作物として有名です。随分前に私も和訳されたこの小説を読みましたが、100年以上前の作品ですので「抜群におもしろい」というほどの作品ではなかったことを記憶しています。そうした手法を生み出したという歴史的な意義が強いのでしょう。
もしこれがジーキルの名前の由来だとしても、ジーキルよりむしろジェミニに関連が深いように感じられます(ジェミニについては、こちらの記事をご覧ください)。
「Jekyll」という名前はたしかに「ジーキル」と伸ばして表記されることもあるようですが、本作のジーキルの名前の由来は細かくはわかりません。
まとめ
ジーキルの生前の出来事については信憑性のある情報が少なく、また死因についてはほぼわからないといって差し支えない状況です。今回のように凶新聞の記事から「冤罪」という要素を抜き出し、それをアカの本に適用することで、おおよそのジーキルの状況を推測することはできます。しかしやはり推測に過ぎないことは踏まえておいたほうがいいでしょう。
ジーキルは、どのようにして亡くなったのでしょうか。死罪として処刑されたのでしょうか。刑務所でなんらかの理由により亡くなったのかもしれません。自殺だったのでしょうか、それとも他殺だったのでしょうか、自然死だったのでしょうか。ひょっとすると無事出所した後に亡くなったのかもしれません(少し考えにくいところですが)。いずれにせよジーキルの死因は謎のままです。
次のエントリ
次回のエントリでは、ミノニヨクシティで喫茶アムブロシアーを経営する「ヤコフ」について考察していきましょう。