こんにちは、Caffeineです。
前回に引き続き「獄都事変」の情報をまとめていきます!
今回は「プレイ感」についてまとめます。
どんな人向け?
フリーゲームやインディゲーム初心者の人
難しすぎず怖すぎないゲームが好きな人
進 – Advanced
前回に引き続きこの「獄都事変」について、少し踏み込んだ情報を考えていきましょう。ネタバレ要素がありますので、プレイ後などに読まれることをオススメします。
プレイ感
実際に「獄都事変」をプレイしてみるとどう感じるものなのでしょうか? 客観的なメリットやデメリットよりも個人的な感想になりますのでご注意ください。
トゥルーエンドのあっさり感
2つのエンディングを見終えて完全クリアをしてみて、個人的にトゥルーエンドの質素さが強く目立って感じられました。どちらかというと悪い方向で際立って感じられました。それというのも、亡者であるマキの受けた陰湿な言動、そしてそれへのリアクションとして発生したマキの怨念、そうしたものがトゥルーエンドでは実に容易に融解してしまっているからです。
もちろんトリガーとして親友「ユウちゃん」がくれたペンダントがあったのは外せません。しかしトゥルーエンドでの「一人ぼっちはイヤなのにあなたを忘れていた」の言葉がひっかかります。大切な親友を忘れてしまうほどの怨念だったということなのかもしれません。しかしそれならば、その「忘れるほどの強い怨念」を見せてほしかったのです。
このエンディングの質素さは、「マキの怨念が融解した」というより、「エンディングだから終わらせた」というものすら感じさせます。
「マキを捕まえる」という行為においても同様です。なぜ道中ではマキを捕まえることはできず、エンディングではマキを捕まえられたのでしょう? 特別な説明はありません。屋上へ追い詰めたから、ともいえますが、これまでのマキの逃げ方から見るに、演出の上で「イベントで斬島を動けなくさせてその間にマキを素早く逃げさせる」という動きをさせれば、たとえ屋上であってもマキは容易に逃げるでしょう。そもそも亡者ですからワープのように消えても構いません。
「エンディングだから終わらせた」と感じられてはあまりに味気ありません。
ひとまず私がプレイした上でのストーリーの感想は、「ユウちゃん」の存在、ユウちゃんとマキの関係性、マキがユウちゃんを忘れてしまった過程、という3つの要素においてストーリーの「語り」が少なかったのではないかと感じました。特にマキの怨念に関しては、融解する過程をもう少し丁寧に描いていただけていれば、もっと没入感は深くなっていたのではないかと思います。
道中の雰囲気はとてもいいものです。マップ移動がやや煩雑なところはあるものの、キャラがおのおのしっかりとしていて「獄卒」という独特な種族めいた存在が、地に足のついた安定さを見せてくれています。そして絶叫するような恐怖演出はないものの、不死身の獄卒や奇妙な敵の気味悪さは残っています。
そうした全体の雰囲気はいいものの、作品の総締めであるトゥルーエンドが、なんだかいつの間にか口のゆるんだ風船が萎んでいくように、アンチクライマックス、竜頭蛇尾の印象を残したままシュルシュルと終わっていったような感慨がありました。
端的にこれを回避するには、30分程度でも15分程度でも少しストーリーを長くした上で、マキとユウちゃんの関係性を描いていればよかったのかもしれません。特に「マキちゃん」がどういう人物でどういう出で立ちだったのかも描かれないのは、感情移入するのが難しくなりかねません。ペンダントを物語上のガジェットとして使用するならば、もう少し背景を濃くしてあったほうが際立ったのではないか、と個人的には思います。
濃厚にするかあっさりにするか
この「獄都事変」は、よくいえば派手さを求めていない作品ということができるでしょう。妙に浮かれることのない落ち着いた作品だということもできるでしょう。しかしその落ち着きやあっさりさを褒めるのならば、マキの受けた謗りやマキの抱える怨念をもっと和らげるべきだったのではないでしょうか。
つまり「ホラー風」に抑えるか、「鬱もの」にまで突き上げるか、という問題です。本作ではどっちつかずで中途半端な印象があるのです。
本作ではホラー”風”に抑えることには成功しており、ホラーが苦手な人にでも楽しめるようになっているでしょう。しかしそれにしてはマキの受けた心ない言葉や彼女の恨みが重いのです。
逆にそこに評価の重点を置くと、今度はゲーム全体が薄味に感じられるようになってしまっているのです。
そのため個人的には、ホラー要素を濃くしないのであれば金具やネックレスにまつわるマキのエピソードも弱めるか、そのエピソードをそのままにしたいのであればゲーム全体の雰囲気をもっとドロドロとした重いものにするべきだったのではないかと思います。
もし端的に手を加えるのならば、トゥルーエンドをもっと厚くするのがよかったのではないかと個人的に感じます。このトゥルーエンドでの尻切れ感が強く、全体のバランスを崩しているように感じられるからです。先ほど申し上げた「ユウちゃん」の存在、ユウちゃんとマキの関係性、マキがユウちゃんを忘れてしまった過程、この3点が個人的に欠けていると感じられた箇所です。
しかし「ユウちゃん」の存在自体やマキとの関係性は、どうしてもエンディングだけではなくストーリー本編で語らないと逆に「付け焼き刃」の印象が強くなってしまいます。そのため「マキがユウちゃんを忘れてしまった過程・理由」をトゥルーエンドで描くなどすれば、ある程度はこの印象も薄れたかもしれません。
あっさりした毒
より個人的な感想を述べるなら、本作の「毒」に関してです。本作の物語の主体は、主人公でありプレイヤーが操作する獄卒・斬島でしょう。しかしその物語の中心キャラクタは亡者であるマキです。もし操作できるキャラクタが斬島ではなく平腹など他の獄卒であっても物語は成立しますが、マキがいなければこの「獄都事変」は成立しません。
しかしトゥルーエンドでのマキの引き下がり方は、あまりに後味がすっきりとしすぎていて余韻に欠けて感じられます。完全クリアを果たして「おわり」の画面を見たときに、「私はいったいなにをプレイしていたのだろう?」と「マキの怨恨」も「人の情」も余韻として香りませんでした。
たとえばこの作品がシリーズ化して、様々な亡者を捕らえる長編になったとしましょう。獄卒たちの魅力をいかんなく発揮すれば、人気が出るかもしれません。しかし様々登場する亡者のなかで、このマキはどれほど輝く敵役となるのでしょうか?
本作の目的は「亡者を捕まえる」ということでしたが、その実ホラーゲームとしての「ホラー」の実態は学校に住み着く魑魅魍魎たちです。「マキ」は逃げているだけなのです。
その点を考慮すると、マキのもつ「毒」を学校の魑魅魍魎たちとリンクをもたせるなどしたほうが、重厚感が出たのかもしれません。
完成度は高い
全体的なゲームの展開をおさらいしておきましょう。
この「獄都事変」のストーリー展開は、冒頭の世界観やストーリーの解説部分、そして校舎を探索するパート、次に鏡のなかの世界、その後が変異後の校舎、そしてエンディングへと繋がっていきます。
このようにストーリー展開をパートに分解すると、先ほどの通りエンディングがやや尻切れだった点以外は、ひっかかるようなところがありません。冒頭ではしっかりとゲームの最終目的が語られ、校舎を探索するうちにゲームのシステムを理解するようになり、鏡のなかの世界で獄卒・斬島の強さと人間との違いを認識させられ、変異後の校舎でより一層の不気味さを味わうこととなり、そしてエンディングで物語は終わっていきます。
このようにそれぞれの要素を改めて見返してみると、獄卒のキャラクタ性、校舎内の怪異の演出、不気味な雰囲気、どれをとってもフリーソフトとしては充分すぎる出来だといえるでしょう。
人気を博した理由がわかるというものです。
実をいうと、こうした批評は「重箱のすみをつつく」ようなものとも捉えられるでしょう。完成度が高いからこそちょっとした欠点が際立つのです。完成度が低いものでは、むしろちゃんとしているところが際立ちます。ですので今回私が申し上げた点は、実はさほど重視するものでもないのかもしれません。
わたしはけっこう楽しめたから
いいところを評価したいなー。
俺としてはとにかく
バトルを多めにしてくれたほうが
好みだったかなー。
どういうところを評価するにしても、
一度プレイしてみて実際に味わってから
それぞれが考えてみるのが
いいのかもしれませんね。
次のエントリ
次回のエントリでは、「獄都事変」についてより踏み込んだ情報をまとめていきます。