こんにちは、Caffeineです。
今回は「ミノニヨクシティ」に関して、よりしっかりとご紹介すべく、ネタバレを少し含めて解説していきます!
どんな人向け?
奥深いストーリーを楽しみたい人
暗い物語が大丈夫な人やむしろそっちが好きな人
進 – Advanced
この「ミノニヨクシティ」について、少し踏み込んだ情報を考えていきましょう。
甚大なネタバレはありませんが、未プレイの方にとっては少しばかりの情報開示があるので、なにも知らずにプレイしたい方は、まずはダウンロードしてプレイしましょう。
プレイ感
では実際にプレイした上での感想・感慨を述べていきます。
フェイクもの
「ミノニヨクシティ」はいわゆるフェイクものです。本作は一見するとフシギ系やほのぼの系ですが、プレイを進めていくと鬱系やホラー系の演出がなされる作品です。
フェイクものという呼称は多く使われているわけではありませんが、たとえば他のジャンルに「ドキュメンタリだと思わせておいて実はフィクションでした」というタイプの作品があり、「フェイク・ドキュメンタリ」や「モキュメンタリ」と呼ばれることがあります。
こうしたフェイクものは小説・映画など幅広く存在します。
裏がある
このフェイクものでは、表と裏があります。物語を進めていくと、最初に受けた印象が段々と変化していきます。特にフェイクものでは裏があることが特徴的です。これがなぜ特徴的かというと、おそらく人はどんなものにでも「裏」を探るからです。実際に裏があるかどうかは別として、人の性として裏を疑わずにはいられないのです。
「気づく」ことができる
フェイクものは一種のミステリのように、「どのような裏があるのか?」という設定を探る楽しみがあります。これは「作者はどういう裏<真実>を見せたいのか?」ということを探ることでもあります。この裏や真実の意味をしっかりと理解したときに、鑑賞している私たちは「なるほど、こういうことを伝えたかったのか」と合点し気づくことができます。この合点し気づくこと自体が、フェイクものの楽しみです。
日本のフリーホラゲの定番
実のところ、日本のフリーホラーゲームの界隈では、こうしたフェイクものがすでにある程度定番となっています。通常の作品では「ホラー」として銘打って「どうぞ怖がってください」と提示されるものですが、フェイクものであれば「これはホラーです」と提示することなく、「このゲームはほのぼの系なんですよ(実は裏があるけど)」というプレイ前からプレイヤーを騙すことができるのです。
この手法は非常にインパクトが強く、しっかりとした世界観と真実を用意していれば、人気が出る可能性の充分にあるジャンルです。実際、私はこの手の作品が好きです。
「考察」という楽しみ
またこの手の作品は、考察の余地が残されていることがあり、しっかりとした真実を模索して考えることで、プレイヤーを楽しむことができます。これは「SIREN」シリーズや「FNaF」シリーズなどに顕著です。SIRENシリーズではアーカイブとして世界や物語の設定が明かされることがありましたが、FNaFシリーズなどでは「イースターエッグ」やシークレットとしてふつうにクリアするだけではわからない設定が明らかになることもあります。
こうした設定を知ることで、そのゲームのなかの世界やキャラクタの意外な一面が見えたり、本質が垣間見えたりすることがあります。そしてそこから「この作品とはなんだったのか?」を考察することが、その作品に参加するひとつの楽しみとなりうるのです。
騙される快感と不快感
しかしフェイクものは、諸刃の剣となることもあるでしょう。なぜならフェイクものの基本は「騙す」ことであり、人によっては騙されることで不快感をおぼえる可能性があるからです。これは騙す側の技術も関係してくるでしょう。また騙される側の心得・心構えも影響してくるでしょう。いわば制作サイドがしっかりと騙す技術をもっていて、騙される側に心理的余裕や準備ができているときに、もっとも効果が高くなるといえます。
しかしこれは、実のところある程度の経験が必要です。
そうしたフェイクものが存在するという認識、そしてそれはたしかに「騙す」ということではあるものの、鑑賞者を喜ばせるための「騙す」ということであるという許容などがなければ、おそらくは気持ちよく騙されることができずに、不快感や不信に繋がって終わりかねません。
そしてときには、その作品で描かれる「真実」に対する評価も大切になります。これは制作サイドの技術と、その作品が鑑賞者にどれくらい合っていたが基準となりうるでしょう。つまり「しっかりと騙されてあげた。作品の真実も理解した。その上でこの作品はつまらなかった」と判断しうるということです。こういう評価が現れたとき、単にそう判断した鑑賞者に作品が合わなかっただけなのか、それとも制作サイドの技術が未熟だったのか、しっかりと精査しなければなりません。
ネタバレは基本的に禁物
こうしたフェイクものは、原則的にネタバレが最大の敵であり、そうした作品について語る時は注意を払う必要があります。現在インターネット上ではネタとなっている「犯人はヤス」や「コナン=新一」のように、すでにネタが上がり切っているものもあり、猿の惑星のように古い作品で誰もがオチを知っているようなものもあります。
そのため私のように作品を紹介する立場の人間は、細心の注意を払わなければいけません。
そのため前回のエントリでは本作が「フェイクもの」であるという事実自体を隠しました。「その作品が『フェイクもの』である」ということを露骨に伝えること自体が、ネタバレになりうるからです。
これは私の問題だけではなく、たとえばTwitterで好きなフリーゲームを語るようなときにも、幾許か注意をしておいたほうがいいでしょう。私たちがその作品をプレイして楽しめたのだとしたら、他の人がその作品を楽しむチャンスを奪うべきではないからです。
こういうのであんまり
下手な演出なのを見かけたことないけど、
中途半端だと巧くいかなさそうなのは
なんとなくわかる気がする。
この手のジャンルでイイ作品を見つけたら
「よくぞ巧く騙してくれた!」と思いますね。
やはり推理小説などで
トリックが見事だったときの感嘆と
近いのかもしれませんね。
「ここがオススメ!」
ではこの「ミノニヨクシティ」は、どんなところがオススメなのでしょうか? できるだけ客観的にまとめていきましょう。
少しずつ理解を深めていく
「ミノニヨクシティ」は、いくつかの謎を秘めています。最初はわかりづらいものの、ゲームを進めていくにつれて次第に判明していくでしょう。その予兆は非常に突然で、ときには混乱したり戸惑ったりしてしまうかもしれません。しかしゆっくりとながら「なにか」に気づいていく過程は、いわば「アハ体験」のようなものです。そうしてゆっくりと奥深い物語に惹き込まれていくのです。
世界観・背景を知っていく
世界を知るというのは、いってしまうと究極の目的です。たとえば現実の、この世界の仕組みを知るというのは、よりよく生きるのに大切なことであり、また哲学の最終目標のひとつでもあります。ファンタジーの要素があるとはいえど、「ミノニヨクシティ」のような作品では、その作品のなかの世界の意味が語られることがあります。
その世界を知っていくということは、現実でもそうですが、必ずしも心地いいことばかりとは限りません。ときにはいくらか痛みを伴いながら理解していくことになるかもしれません。
しかし知ることは、必ずしも悪いことではありません。知ること、気づくことは不快なことではありません。
いずれにせよ知る覚悟ができているなら、知った上で進むことも、知った上で戻ることもできます。もちろん知る前に去ることもできますが……。
ミノニヨクシティとはなにか?
「ミノニヨクシティってなんだろう? どんなゲームなんだろう?」、そう考えている時点でもう始まっています。ミノニヨクシティとはなんなのでしょう? そのきっかけはすでに総ての人に見えています。
楽しい真実なのか悲しい真実なのか、愉快な真実なのか不快な真実なのか、それはここで私が伝えるわけにはいきません。もし本当に知りたいならば、単にゲームの世界へ飛び込めばいいだけです。いずれミノニヨクシティがなんであるのか、知ることになるでしょう。
フシギ系? しっかり練られています
ここをご覧になっている人には、残念ながらおそらく感じることのできないものがあります。それは「この作品が適当につくられた作品かもしれない……。いや、そうじゃない!」と確信する瞬間です。これはある種、自分に合う作品を探し続けて知らないものに触れていく者だけの特権かもしれません。
しかしそれはなによりも大切なものとはいえないでしょう。まだ遅くはありません。
「ミノニヨクシティ」の素性がわからずプレイしていいものかどうかわからない人は、安心してください。しっかりと考えてつくられている作品です。
後は覚悟です。いくらか暗かったり悲しかったりするゲームでも、知った上で判断する気概があるのなら、プレイしてみれば自分で考えることができるでしょう。
いろいろな世界を見聞きできる
また「ミノニヨクシティ」では、いろいろな世界を行き来することができます。
どんな世界があるかを示すこと自体がネタバレになってしまうので今は明かしはしませんが、おいしそうな世界や日本のような世界、物悲しい世界や狂った世界など様々あります。
新しい世界を拓いていくというのは、現実でもゲームのなかでも楽しいものです。
「ミノニヨクシティ」内のすべての世界に行くには少し条件がありますが、公式での攻略情報があるのでためらう必要はありません。世界を歩いて回るのは、ゲームクリアの必須条件ではありません。公式の攻略情報でも「より道」と表現されていることからもわかります。
これも必ずしも清々しいより道になるとは限らないのですが、いろいろな世界を見て回るのはとても興味深いことです。
わたしはこういうの大好きだけど、
得意じゃないって人がいても
ぜんぜん不思議じゃないよね。
そうですね。
好みが分かれるというより
たとえ好きになれないとしても
その理由が納得できそう
というところでしょうか。
んー、俺はもっと
わかりやすいほうが好きだな。
真実とかどうでもいいから
楽しいのがいいわ。
「深み」をどこに求めるか、
なのかもしれませんね。
真実という深みがいらないなら
なかなか馴染みにくいのかもしれません。
「ここはイマイチ……」
それでは逆にどんなところがイマイチなのでしょうか?
探索がやや冗長
本作のゲームシステムの根本にはADVとしての探索があります。しかし同じマップを行ったり来たりする「面倒」なタイプの探索となっています。行くことのできるマップは物語を進めるにつれて次第に解放され(ときには隠された条件を満たすことで解放され)ていくのですが、同じ場所を何度も行き来するのは、人によってはちょっとした苦痛に繋がるかもしれません。
いろいろなマップを行き来してはアイテムを集めて物語を進めていきますが、そのアイテムをどうやって入手すべきかは人々との会話によって提示されます。特にメモ機能のようなものはないため、この会話の内容を明確に覚えていないと迷ったり聞き直しに戻ったりする羽目になります。本作では一度に複数のアイテム(3つまとめてなど)を集めることになるので、メモをとりつつプレイしたり、スクリーンショットを撮りながらプレイしたりすると、いくらか遊びやすくなるかもしれません。
ユーザビリティは高くない
こうした面倒さは、移動の利便性の低さにあるといえます。探索ゲームとして同じマップを行き来するにもかかわらず、その移動を短縮する方法に乏しいのです。これはユーザビリティという「利便性」「扱いやすさ」で表すことができます。つまり本作はそうしたユーザビリティがあまり高くないといえるのです。
これは現実でいうと、徒歩でしか移動できないのと同様です。車や電車は当然ながら、自転車すら使えないようなものです。本作には「きのこねくしょん」というワープシステムがありますが、実質的にこれでしか街と街を行き来するインフラがないため、「ワープだから便利」という認識ではなく「ワープしかない」という認識に繋がりやすいのです。
ユーザビリティは移動だけでなく、先述のようにアイテムを集めるという点にも作用します。アイテムを集める、ひいては「目標を達成する」ことが物語を進める条件になりますが、この条件はほとんど会話によってのみ提示され、それを見逃したり忘れたりすると聞きに戻るなど手間をかけることになります。
こうした点でユーザビリティを上げるには、現在ではクエストなどのシステムを設けてクリア条件をメニュー画面などで確認できるようにされています。現実でいうとToDoリストのようなものです。
それをRPGツクールで実装するのは難しいかもしれませんが、「主人公がメモを書き残す」というシステムを提示しておいて、アイテム画面でそのメモを見ることでそのときの直近の目標を確認できる、などのようにすると便利なのかもしれません。
フェイクものは万人向けではない
また裏テーマ・裏ジャンルとも呼べる「フェイクもの」は、実際のところ万人向けとはいいがたいところがあります。その根本は、やはりフェイクものは「騙す」という目的があり、それを鑑賞することで私たちは「騙される」からです。これに対してわずかながらでも不快感を示す人がいたとして、それを責めるわけにはいきません。
そのためフェイクものというテーマ・ジャンルが自分に合っているかどうか、ある程度でも見極めておくといいでしょう。映画でもアニメでもドラマでもマンガでも、世間の評判より自分に合うかどうかが一番大切だからです。
暗さを許容できる人向け
そして本作のフェイクという裏に隠れているのは、とても暗く人によっては重いものです。
これを許容しにくい人はいることでしょう。フェイクものは必ずしも暗いとは限りませんが、少なくとも本作の裏には暗いテーマが隠れています。
そのため気持ちに余裕が今ない人などは、落ち着いてからプレイしたり今は見送ったりするなどしておきましょう。ゲームの本義は楽しむことです。楽しめないときに楽しめないゲームをするより、楽しめるときに楽しめるゲームをするようにしましょう。
次のエントリ
次回のエントリでは、既プレイの方などに対しての考察として、完全なネタバレを含めた情報をまとめていきます。